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サッカーの面白さや怖さを理解することというのは一生ないんだろうな、試合後にそう
思った。いままでにサッカーを何百試合見ていようと、これから何十年サッカーを見よう
と、多分分かり合えない。ずっと。
第一試合、レバノン対UAE戦、埼玉スタジアムは長閑な雰囲気につつまれていた。み
んなお気楽にレバノンを応援していた。もちろん日本のために。予想に反してレバノンが
優勢な状況にゴール裏からは「やばいな、このまま終わったらUAE戦は消化試合になっ
ちゃうよ」「UAEのチケットを買ったヤツは負け組み。レバノン戦だけを買ったやつは
勝ち組。オレ勝ち組。へへ」、みんなお気楽だった。そして私も。
結局サッカーに絶対なんてない、この何度も何度も当たり前のように繰り返してきた現
実をみんながみんな知っていながら気がついていない。前回、日本はバーレーンに引き分
けたことを。UAEはレバノンに苦戦したことを。ドーハの悲劇も98予選もみんな知っ
ている筈なのにね。だからサッカーは面白い。
絶望から希望へ。希望から絶望へ。楽勝から苦戦へ。今日、埼玉スタジアムで行なわれ
た2試合はグループリーグ4チーム全てに夢と希望の大きを変えてしまった。現実を思い
知らされる試合を経験できるチャンスはそう多くはない。その意味ではいい日だった。
試合を振り返ってみる。バーレーンは最初引いてきて、カウンターで攻めてくるだろう、
ということは事前に予想していた。個々の能力は日本が上回っているわけだから守ってカ
ウンターだろうと読んでいた。UAEラウンドの結果と第一試合の結果を踏まえて考える
と引分けで充分だろうと思っていた。
展開自体はその通りだった。しかし予想と異なっていたのは引いてくるレバノンに対し、
あまりにも消極的過ぎる日本の攻め方だった。全く機能していない。闘莉王もオーバーラッ
プをかけていない。自信のなさそうな、そしてあやふやなポジションで躊躇する徳永を見
ると、見ている側は困惑してしまう。
私はこの試合、日本も引分け狙いで来たな、と理解した。考えてみれば当然かもしれない。
UAEが引き分けたことにより、この日本−バーレーン戦も試合も引分けで問題ない。も
ちろん勝つことにこしたことはないけれど、最大の山場は最終戦なわけで、精神的に一番
きつい中日を無理に勝ちに行く必要はないのだろう、そう思った。
そのやり方は悪くない。トーナメントではなくグループリーグ形式で試合を行なうので
あれば、捨てゲームを作るのは当たり前だからだ。精神的なキツさもそうだが体力の消耗
があまりにも酷すぎる。ただ、問題なのはそのやり方が事前に決めたのか、UAE−レバ
ノン戦の結果を見て決めたのかだろう。90分間を通して引分けを狙う、または勝ちを意
識しつつ引分けでヨシとする戦い方というのは選手にも相当な老獪さを必要とする。それ
があのオリンピック世代に理解できるかと言うと難しい。
ボールは大体の局面に置いて日本が支配している。いや持たされているという言い方の
方が正しい。ボールがバーレーンんおペナルティエリアに入ろうとする手前で囲まれてつ
つぶされてしまう。今日は高松が先発で、平山のようなポストプレーヤーがいないからゴ
ール前にボールを遅れない。
こう着状態のまま闘莉王負傷退場・・・だんだん日本に対して状況が悪くなっていく。
今日、私がいる場所はアウェイ側カテゴリー5。つまりコアサポが集まる本当のゴール裏
である。皆立って応援している。私も立って声を出す。私の前後左右はどう見ても高校生。
彼、彼女に混じって一生懸命声を出す。でも代表は動かない。動かないのではなく動けな
い。
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なすすべも無く前半が終わり後半が始まる。観客席は明らかに余裕がなくなっている。
それはもう引分けでいい、そういう空気ではなかった。勝たなきゃダメだ。勝たなきゃ明
日につながらない、その空気は十代の彼らからもハッキリと読み取れた。
日本は焦っているように思える。UAEラウンドでもそうなのだが中盤でのボールロス
トがあまりにも多い。それは山本監督とショートタッチ戦術の副作用だと思うけれど、ボー
ル回しを早く行ないすぎるために焦りが入るとどうしてもボールに触れなくなってしまう。
トルシエ時代の日本代表もそうだけれど、原則と例外、その使い分けが日本代表ができな
い。日本代表だけでなく日本人の殆どがそうなのだけれど。これは今、嘆いても仕方が無
い。
点が欲しいが取らせてくれない。逆にバーレーンがボールを支配し始める。やはり前半
は体力を温存していたか。このチーム、ノーマークであったが実は相当頭がいい。我慢す
る時間と攻める時間を使い分けることが出来るチームは実力の有無にかかわらず強いチー
ムだと思う。もう引分けでかまわない。私は覚悟した。
状況はさらに悪くなる。だんだん押し込まれる。ペナルティエリア前で日本はファール
を犯す。日本側から見て左ナナメ45度。これは阿部や中村俊輔だったら絶対に外さない。
私は神に祈った。
蹴られたボールをキーパーははじいた。しかし折り返しのボールを押し込まれてしまう。
日本、グループリーグを通じてはじめての失点。椅子に座り込むヤツ。呆然とするヤツ。
怒声を上げるヤツ。さまざまであったが気持ちは多分同じであろう。私は空を仰いだ。
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日本は怒り狂ったように攻撃をするが、もうどうにもならない。後半ロスタイム、最後
の最後で詰めるがそのまま試合終了。0−1.日本敗戦。
試合開始前、あれほど緩やかな雰囲気を漂わせていた空気はもはや無かった。焦りと殺
伐さが場を支配していた。トボトボと挨拶に来る選手達に観客達は総立ちになって声援を
送る。「ニッポン!ニッポン!」ブーイングなんて出なかった。残り2戦、絶対に勝たな
ければならなくなった代表と、諦めたくない自分に対する応援なのだと思う。私も声を出
した。
選手は引き上げ始め、私も引き上げる。スタジアムの外に出ると不思議と悔しさは無く
なっていた。これが幸い今日はバイクで来ている。これが浦和御園駅まで葬送行進のよう
に歩いていったら月曜日は会社にいけなくなっていたかもしれない。浦和御園駅とは逆の
方向に行くと埼玉スタジアム東駐車場に出る。そこにバイクを止めてある。駐車場の手前
に池があり、ちょっとした小川が流れている。川のせせらぎの音を聞き、池に写る月を見
ると完全に我に返った。サッカーの怖さを全くわかっていなかったのだなあ。今まであん
なに見ていたのに。バイクに乗り自宅に帰る。埼玉スタジアムは東北道浦和インターチェ
ンジの真横にある。ここから自宅までは70キロ。渋滞無く走れば1時間の距離である。
−追記−
日本ラウンド第二戦、日本対レバノン戦は2−1で日本の勝ちでした。体調不良でこの
試合を見に行くことはやめましたが、第一試合のUAE−バーレーン戦もバーレーンが勝っ
たことを見ると、この3戦は体調維持が完全にカギを握っていることが分かります。
実力がありながらも完全にばてたのがUAE、完全に維持しきっていたのがバーレーン、
その中間に日本とレバノンがいると言った感じでしょうか。そう考えるとUAEラウンド
の結果というのはこの日本ラウンドは全く参考にならず、最終戦の日本対UAEは日本が
かなり優位に立っていると思います。さてどうなるか。
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