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2日目:レガネス 対 ヌマンシア

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11月11日 
成田-モスクワ-マドリード

11月12日
レガネス 対 ヌマンシア

11月13日
ブラガ 対 ボアビスタ

11月14日
セルタ・ビーゴ 対 アヤックス

11月15日
ビーゴからアベイロへ

11月16日
ベンフィカ 対 モルデ

11月17日
ジルビセンテ 対
ベネレンセス

11月18日
スーペルリーガ2部

11月19日 第一試合
ヘタフェ 対 レバンテ

11月19日第二試合
アトレティコ・マドリード 対
 ビジャレアル
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 午前6時起床。快晴。日本からヨーロッパにいく場合、時差の克服はそれほど難しくはない。欧州標準時の午後8時(夏時間)は日本時間の午前3時で、この程度なら日本でもごく普通の日常である。その後、8時間以上寝るわけだから夜中に目が覚めることを除けば基本的に時差ボケはない。

 今日からサッカー観戦の日々が始まる。最初の試合はマドリー近郊のレガネス市にある、CDレガネスS.A.Dの試合。スペイン2部で開始は12時。何でまたこんな真昼間に・・・。JFLだって午後1時試合開始だぞ。スペインは試合日程の決まるのが異様に遅く、一週間前に発表される。私はマドリード3強チームの一つ、ラーヨ・バジェカーノの試合が今日、日曜日に組まれるだろうと踏んでいたのだが残念ながら土曜開催。レアル・マドリーとダブルヘッダである。ついていない。日本を出発する前にスペイン1部2部の所在地は全て調べ上げており、LFPのサイトに発表されたカードと突き合わせて見るとマドリー近郊で開催される試合はこのレガネスしかなかった。行くかどうか少し悩む。

 私はサッカーを見に来たのだけれど、他のものにだって興味はある。マドリードをでるのは今夜23時。一日あれば世界遺産の町、トレドに一日中行けるし、ラマンチャの荒涼とした風景も見られるし、マドリード市内のプラド美術館に入り浸ることもできる。プラド美術館はルーブル、メトロポリタンに次ぐ世界3大美術館のひとつで、所蔵品のゴヤとルーベンスはどうしても見たかった。これは日本では見ることはできない・・・見たい。でも意を決して近郊電車に乗り込みレガネスに向かう。バカである。

 去年、ドイツに行ったときもそうだったのだが、こういうマイナーリーグの試合で一番困るのは、スタジアムはどこにあるのか、それ以前にその町はどこにあるのかということ。googleで「レガネス」を検索してみるとマドリードから電車で20分程度ということがわかる。町の人口は14万。サンチャゴベルナベウを国立霞ヶ丘競技場に置き換えるとレガネスは味の素スタジアムの辺りである。場所はわかった。次は行きかた。有隣堂でイベリア半島150万分の1の地図を購入し、都市を探す。この地図は5万人以上の都市は殆ど載っているので便利だ。レガネス市はマドリード南部にあることがわかる。マドリードの近郊電車は主に北部のチャマルチン駅と南部のアトーチャ駅にわかれているので、アトー
チャ駅に向かう。日本で言えば、浦和駅は東京の北にあるから上野から乗れば着くだろうという発想と同じである。

 アトーチャ駅に着いたのはいいが、切符はどうやって買えばいいのか、何番線に乗ればいいのかがわからない。有人切符売り場もインフォメーションも行列が並んでいる。ホテルを出て、コインロッカーに荷物を預けたり朝食を取ったりしたので既に午前11時。試合開始間に合うか・・・。私は一か八か、自動券売機に向かい、液晶パネルを片っ端から押してみた。スペイン語なのと駅名の表示順序がアルファベット順になってないので難しい。’LEGANES’の文字を見つけし、無事発券。1ユーロ10セント。はあ・・。次は発車番線の確認。まず駅員を見つけ、レガネス?と聞く。駅員は黙って端の階段を指す。指定されたホームに降りて見るとまさに電車が発車しようとしているところであわてて飛び乗る。飛び乗った後、乗客に再度尋ね、ちゃんと行くことを確認する。行かなかったら悲劇だが、大丈夫。ホッとしたら背中から汗が吹き出た。

 電車に乗ること20分、レガネスセントラル駅に着く。ここで降りる。降りた駅はガランとしたしており期待していたタクシーはいない。荷物を背負って反対側の入口に出るも、ここもいない。試合開始まであと30分。結構厳しい。

 私は意を決して歩いて行くことにした。とりあえず歩行者を捕まえ、「Estadio?」と聞くと、指差しながら教えてくれる。教えてくれる人は延々と道順を説明してくれるが、私が覚えるのは目の前の道路は左に行くのか右に行くのか、ということだけである。あとは聞き流す。教えられた道路を進み、最初の交差点でまた人を待つ。そして捕まえた人にスタジアムの場所を聞き、次の交差点まで歩く。このやり方をすれば、初めての町でも絶対に迷わない。問題はどこまで歩けば着くのかというのが分からないというところだ。ヘタをするとついた頃には試合が終わっているかもしれない。

 まあ、なんとかなるさ、開き直った気持ちが視野を広くする。新興都市レガネスは町並みが新しくきれいだ。もっとも味気が全く無く、知らない町を歩くと言う面白みはない。テクテク歩くこと約20分、同じように歩いていくサポーター集団が見え、スタジアムが近いことをうかがわせる。サポーターはアルゼンチン代表とボカジュニオルスのユニホームを着ている。CDレガネスのオーナーはアルゼンチン人であり、選手もアルゼンチン系が多い。そのためであろう。

 あと数分で試合開始のはずだが彼らは急ぐ様子もない。アルゼンチン代表ユニフォーム、アルゼンチン国旗と彼らの格好は一体どのチームを応援しているのかと突っ込みたくなるが、これがレガネスの現状を表している。昨シーズン終了後、クラブのオーナーがアルゼンチン人に変わると10人のスペイン人を放出、15人のアルゼンチン人を雇い入れた。クラブの方針が露骨極まりなくて他人事ながら嫌気が差す。道は合っていそうなのでそのまま進むと程なく照明塔が見え、スタジアムに到着する。窓口でバックスタンドのチケットを買い、(20ユーロ)、中に入る。バックスタンドは「ラテラルゾナ」と言うらしい。

 レガネスのホーム、エスタディオ・ムニシパル・ブタルケは新興都市らしい小奇麗なスタジアムであった。サッカー専用であるがシートの傾斜は緩く、あまり外国のスタジアムと言う雰囲気はしない。収容人数は8千人で、観衆は約2千五百人といったところ。応援も長閑でJ2の試合のようだ。

 スタンドに入ると既に試合は始まっていた。一応シート指定がされているのだが、なにかどこに座ってもいいような気がする。センターライン付近は込んでいるのでホーム側端のほうに座る。隣はサポーターズグループが陣取っていてヒマワリの種をボリボリほおばりながら試合を見ているので地面が汚い。試合は・・・お世辞にもよくない。止まってパスを待つ姿勢もそうだが、シュートで終わらないのが悲しい。ボールを奪うのはミスからが起点、そしてミスをして奪われる。センターラインを挟んでボールの取り合いをするのを見ると覚めてしまう。なんだかなあ・・と思っていたが、ふと重大な事に気がついた。青白のユニフォーム対赤色のユニフォームの試合なのだが、どっちがレガネスでどっちがヌマンシアなんだ?

 サポーターズグループをよく見ると青白のユニを着ている人のマフラーに「LEGANES」と入っているのでこっちがレガネスらしい。マイナーリーグの試合を見るとこのレベルから苦労する。応援団はゴール裏、メインスタンド、バックスタンドの3つに分かれていて、それぞれが独自の応援をしている。分裂応援は見慣れているけれど、3分裂というのは初めてだ。しかもみんなサンバである。正直言ってうるさい。選手もやっていて辛いだろう。リズムはアルゼンチン標準ともいうべきメロディーで、これはトヨタカップのとき、ボカジュニオルスのサポーター達がよく歌っていた。

 対するヌマンシアのサポーターたちはずっと座ってゲームを見る。ここまで声を出さないサポーター達も珍しい。達観の域に達しているのかもしれない。ヘタレた試合を見せ付けられて呆れているのかもしれぬ。シュートも打てず、内容が全く無いまま0-0で前半を終了する。

 後半開始。やっとゲームが動く。ヌマンシアはフォワードを変え、ラインを上げて速攻を始める。レガネスはディフェンスが対応しきれていない。後半10分、レガネス先制。スタンドは一気に静まり返る。が、気を取り直して応援する。しかしサポーター達は明らかにイライラしてきている。

 レガネスは押し込まれながらも時折速攻をかけてを使って反抗する。しかし効力をなさず逆にカウンターを取られる。レガネスはディフェンスが弱すぎ。ヌマンシアは現在首位である。実力が違う。対するレガネスは昨期は22チーム中19位で3部に降格するはずだった。ところが9位コンポステラが選手への給料未払いという事件を起こしレガネスの変わりに3部へ降格。危うく難を逃れた格好で今期を戦っている。

 

 試合は先制したヌマンシアが主導権を握る。ヌマンシアの選手がディフェンスを突破してボールを貰う。オフサイドのように見えたが副審はこれを流す。これは大きなチャンスになったがギリギリでゴールラインを割る。レネガスサポーターたちは気が狂ったように罵倒する。私はスペイン語は全くわからないが、彼らが何を言っているのかは実によくわかる。彼らはしつこい。そこまでするほどのものかと思うが、彼らも辛いのだろう。サッカー専用スタジアムだけあってピッチと観客席は近いから副審も大変だ。副審が彼らの前を通るたびに罵倒される。

 その内の一人、典型的なアルヘンティ-ナと目が合う。彼は哀願の目つきで私に訴える。「なあ、あんたも見ただろう、アレはオフサイドだ。オフサイドに決まっているんだ。頼むからオフサイドだと言ってくれよ!!」 ウン、たしかにあれはオフサイドだと思うけれど、その前に穴だらけのディフェンスを
なんとかしたほうがいいと思うよ。

 試合時間が残り少なくなっていく。レガネスは、ゴールキーパーから直接フォワードにボール放り込み作戦を展開する。しかしその作戦は殆ど意味をなさないことを私は三ツ沢球技場でイヤというほど経験している。逆にヌマンシアはカウンターのチャンスとなり、レガネスゴールを脅かす。試合はまだ終わっていないのだがみんな引き上げ始める。試合終了10分後の三ツ沢の光景が試合終了10分前に起こっているようなものである。試合に負けて罵声をとばす行為には批判が集まるが、最後まで見てもらえるだけマシなのではないかと思う。

 ロスタイム間近、ヌマンシアは追加点をいれ、勝負は決した。そしてタイムアップ。大きなブーイングがなり、みんな引き上げ始める。選手も挨拶することなく、そそくさと引き上げる。それがスペイン流なのかもしれないが、「お前らなんかと一緒にやっていられるか」というあきらめのような感じでもあった。

 私もスタジアムの写真を撮り、スタンドを離れた。階段でヌマンシアのマフラーを巻いたお婆ちゃんが私に「ニカッ」と笑う。わざわざアウェイまで来て・・チームが好きなんだろうなあ。スタンドはあっというまに無人になった。

 私はスタジアムの前に1件だけ開いている屋外ショップでマフラーを買った。ふと、スタジアムを見るとすでに門が閉鎖され、誰もいない。そんなものか・・・私は行きにきた道をそのまま引き返して駅に向かった。まだ午後2時である。日差しは強く、歩くのはしんどい。ちょうどシェスタの時間なので人通りは少ない。なんというか・・・サッカーのゲームがあった、という雰囲気がない。数年前の市原とか大分を思わせる。それは、今日の試合はなかったことにしましょうというレガネス市民の無言の抗議なのかもしれぬ。

 レガネスセントラル駅に着くと私はマドリードアトーチャ駅に戻りそこから地下鉄に乗換え、1号線サンチャゴベルナベウ駅に向かう。レアルマドリーの試合は昨日行われたが、ショップは開いているし、あそこはスタジアムも開放している筈だ。私はレアルマドリーはそれほど興味はないが、あのスタジアムは見たかった。駅に近づくとだんだん日本人が多くなる。私は少し憂鬱になった。
(翌日に続く→)

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