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7日目:
ジル・ビセンテ 対 ベネレンセス

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11月11日 
成田-モスクワ-マドリード

11月12日
レガネス 対 ヌマンシア

11月13日
ブラガ 対 ボアビスタ

11月14日
セルタ・ビーゴ 対 アヤックス

11月15日
ビーゴからアベイロへ

11月16日
ベンフィカ 対 モルデ

11月17日
ジルビセンテ 対
ベネレンセス

11月18日
スーペルリーガ2部

11月19日 第一試合
ヘタフェ 対 レバンテ

11月19日第二試合
アトレティコ・マドリード 対
 ビジャレアル
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 UEFAカップの翌日、リスボンから再度ポルトを目指す。ポルトとリスボンの間を往復ビンタのように移動するのはさすがにバカバカしいが、ポルトガルで金曜日にサッカーが開催されているのはポルトの北、バルセロスだけなのでやむを得ない。バルセロスは4日前にブラガからビーゴに抜けるときに時間待ちをしていた駅で、まさかもう一度この町に来ることになるとは思っていなかった。そういえばバルセロスに行ったとき、線路脇に古ぼけた照明塔のある建物があったが、あれがそうだったのだろうか。


 昼過ぎにポルト着。ポルトサン・ベント駅前、リベルターデ広場のそばにポルトガルテレコムのオフィスがある。ここではインターネットが使用できるので使わせてもらう。 まず横浜FC対モンテディオ山形の試合結果を見る。4-2で横浜の勝ち。しかも逆転勝ちというにわかに信じられぬ結果に小躍りする。続いて甲府対川崎の結果の確認。こちらは0-2で負け。ぼちぼちプレッシャーがかかってきたか。最終節まで持てばよいが・・・(今となってはこの敗戦は大きすぎた。)


 ポルトから今日の試合会場であるバルセロスまでは電車で1時間半ほど。ポルトガルリーグは全国リーグの名を呈しているが、一部18チームのうち、8チームはポルト近郊、6チームはリスボン近郊なので、結局はポルト対リスボンの都市対決にしかすぎない。 のんびり走りながら19時、バルセロス着。駅の近くに照明塔が煌々と点いた一角がありあそこがスタジアムだなとひとめで分かる。


 駅近くのホテルに投宿してそのままスタジアムに向かう。駅の裏手の寂れた坂道を登ると倉庫街へ出て、そこがちょうどスタジアムの裏手になる。かなり寂しい。ヨーロッパサッカーの場末というイメージがぴったり来る。このスタジアムでプレーをするというのも同じプロなのか、と思う。



 チケット売り場を探す。スタジアムを3/4周してやっと見つける。ゴール裏が20ユーロ。バックスタンドが10ユーロという変わった料金設定で迷わずバックスタンドを買う。入場してみると、料金の違いが分かった。ゴール裏は屋根もついていて座席も背もたれ付き、しかもキレイ。バックスタンドは雨ざらしで壊れかけたイスが並ぶ。なるほどな、と納得するが、私が入場したのはまさにその20ユーロのゴール裏で、10ユーロのバックスタンドに行くにはゴール裏の座席を書き分けてスタンドの端にいる係員にチケットを見せて金網を開けてもらって行くことになる。私としては別に問題はないのだが、何か間違っているような気がする。


 試合開始1時間前。例にスタンドは私一人である。スタジアムはサッカー専用競技場で三ツ沢よりやや小ぶりである。ピッチのサイドラインとスタンドの間隔が非常に狭い。アップをする選手はまさに触れる距離で大丈夫なのかとも思う。



 試合開始が近づくにつれて観客も増えてくる。しかしまあポチ・ポチという感じで多いというものでもない。JFLというより関東リーグの試合を思わせる。ボケーっとピッチを見ていると、選手と審判がパラパラと出てくる。選手紹介もなにもない。何をしているんだろうと思っていたが、両チームが両サイドに散らばるといきなり試合が始まった。 私はストップウォッチ付きのデジタル時計を常備していて、通常キックオフと同時にストップウォッチもスタートさせるのだが、この虚を突かれたキックオフに私は唖然とするしか方法がなかった。


 試合は・・まあ・・こんなものか、というもので、何に注目するかというものは見出せなかった。パスミスが多いのでプレーのひとつ一つに白けてしまう。ポルトガルの中位というのはこんなものなのだろう。こういう試合にもサポーターはいる。メインスタンドアウェイ側に陣取っている。普通のスタジアムからすると珍しい位置にいるが、これはホーム側のゴール裏がゆったり観戦エリアになっているため、必然にこうなるのだろう。彼らはタイコとラッパ、シンバルをもち、良く聞くサポーターズメロディをノンストップメドレーで演奏し続ける。試合展開に全く関係なく自らの曲目をひたすら演奏し続けるそのスタイルはある意味新鮮に写る。私は小学生の頃、パチンコ屋が開店するたびにチンチンドンドンと演奏し続けた人たちのことを思い出した。


 突然、雨が降り出してきた。私は放送ブースの真下に雨をしのげるスペースがあるのを見つけて避難する。最初は私一人だったが段々人が増えてきて狭い一角はギュウギュウとなる。私は左右を若い女の子に押されて、それ自体は悪い気はしないのだが息が詰まる。 その横はカレになるのだろうか。その彼が「ジャパニーズ?」と私に話しかけてきた。試合がつまらないので少し話す。「なんでこの試合を見に来たんだ?」「今日、ポルトガルで試合があるのはここだけだからだ」「去年、ここで日本人のプレーヤーを見たよ」「ブラガの広山のことか」「そう、ブラガだ。彼は今どうしている?」「フランスのモンペリエでプレーしている。残念ながらレギュラーではないが」「そうか・・」


 彼は言う。「今日の相手、ベネレンセスの7番、アイツはこのバルセロスの出身なんだ。まだ若いけれど才能はある。いつかポルトガル代表になると思う」 この小さな町からプロフットボール選手がでたことは誇りでもあるのだろう。雨が降りしきるエスタディオ・リベイロはうら寂しさが漂う。代表としての才能は片鱗も見られないけれど、なってくれればいいなとは思う。 前半、後半も併せて得点機が全く見られず時間が進む。当然客は荒れはじめる。「今日の試合はノーグッドだ」と彼は言う。私は激しく頷く。ピッチ上の警官に緊張感が漂いはじめる。



 このスタジアム、先ほども述べたように、フィールドとピッチの間隔が非常に狭い。距離にして約1メートルくらいか。その間に電動幕式の広告看板と警官が挟まっており、さらにその隙間を縫って副審が走る。よくぶつからずに走れるなと感心していたら案の定ぶつかって副審はコケた。場内から失笑が漏れる。


 警官も警官で彼らはピッチのほうを向かって立っている。職務上はスタンドの方を向くべきではないかと思うのだが、まあ大丈夫という実績があるのだろう。警官だってどう見ても60歳近いオッサンで、町の嘱託のような感じである。試合の際に警官をつけるのはポルトガルサッカー協会の方針なのかもしれないが、この町に関してはよけいなお世話という感じがしないでもない。


 試合はそのまま0-0で終了。なんの音楽もない、単なる公式戦が消化されました。と言った感じの幕切れだった。こういうものか、と釈然としないまま私も引き上げた。 雨は弱くなったがまだ降っている。カメラを懐の中に入れてホテルに戻る。明日はポルトから内陸部に入り、ポルトガル2部、フェルゲイラスの試合を見に行く予定である。


(翌日に続く→)
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