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9日目:第二試合
アトレチコ・マドリード 対 ビジャレアル

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11月11日 
成田-モスクワ-マドリード

11月12日
レガネス 対 ヌマンシア

11月13日
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11月15日
ビーゴからアベイロへ

11月16日
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11月18日
スーペルリーガ2部

11月19日 第一試合
ヘタフェ 対 レバンテ

11月19日第二試合
アトレティコ・マドリード 対
 ビジャレアル
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 ヘタフェからマドリードに戻る。次の試合まで間があるので市内で少し食事を取る。王宮の近くに生のハモン(ハム)を扱った店がありそこで食事を取る。さすがスペインの首都マドリードだけあって、肉でも魚でもなんでもある。ここはイベリア半島の中央という理由で意図的に作られた首都。そのため鉄道でも道路でもスペイン国内のすべての道はマドリードを中心に設計されている。


 スペインの生ハムはパルマ、ボローニャと並んで世界最高の声が高い。一度最高級品を食べてみたかった。カウンターに座り、イベリコ豚のハムを注文する。これはハモンセラーノと呼ばれる品種で日本でもつい最近解禁された。ついでにワインも頼む。スペイン最高級のリオハワイン。そしてサラダ。スープ。。サッカーばっかりの極道旅行であるが、今日はスペイン最後の夜なので少し贅沢をする。いずれも日本では食べたことのない味。少し塩味があり、肉の甘み上品な油と共にがにじみ出る。緊張感が解けたのか、疲れがどっと出る。夜行列車明けの体であることを思い出させる。今夜は飛行機、明日も飛行機、とりあえず意識しているのはそこまで。来週は夜行バスなんてことは考えない。


 ワインをフルボトル1本飲んだため、ヘロヘロになって店を出る。なにしろ普段は350ミリリットルのビール缶1本で顔が赤くなる人間である。スリや強盗に会ったら1発でノックアウトであったが幸いにもそのような目にはあわず、地下鉄を降りることができた。地下鉄5号線、プリアミデス駅から少し歩く。周りはアトレティコ・マドリーのサポーターで埋まっている。交差点ごとに多数配備される警官、パトカー、白バイ、騎馬。そしてグッズ屋台。この観戦旅行8試合目にしてやっと欧州サッカーの緊張感を味わうことができた。

 これだよこれ。サポーターはみんな陽気だ。酒を飲んでいる人も多い。私も酔っ払っているので人のことは言えない。路地を少し入れば立小便をしている人も多い。スペイン人は隠すことをあまりしない。つい目に入ってしまう。デカイ物を見せられるとケッ!と思う。でかけりゃエライってもんじゃないやい!と勝手に憤る。


 気を取り直してスタジアムに向かう。三叉路を過ぎると巨大なスタジアムが現れる。エスタディオ・ビセンテ・カルデロン。収容人数5万5千人のサッカー専用スタジアム。5万5千人は東京の国立霞ヶ関競技場と同じであるが、陸上トラックが省かれている分、専用スタジアムとしての巨大さが際立ってくる。あたり一面は装甲車と防弾チョッキをつけた武装警官。緊張感が漂う。チケット売り場を探す。見つからない。仕方が無い。スタジアムの外周路にそって探す。5分の4周したところで見つける。前回もそうだったが、右周りと左回りの2者択一ではいつも失敗する。運がないというのか。


 スペイン1部リーグなのでチケット代はノビノビと高く、30ユーロであった。日本円で3700円くらい。マリノスと同じくらい。これが最後の試合と思うと感慨深いものがある。2階席に上がると赤と白に区切られたスタンドが目に入る。まだ席はがらがらだが人は続々と入ってくる。



 マドリードというとどうしてもサンチャゴ・ベルナベウ、そしてレアル・マドリードを思い出してしまうが、アトレティコ・マドリードだって全く引けを取っていない。選手構成やクラブ運営が堅実な分だけ、こちらのチームのほうが好感が持てる。アトレティコ・マドリーで私が知っている選手はシメオネしかいないが、これで充分だろう。スタメンだけで全員知っている名前が出るもう一つのマドリードのほうが異常なのだ。


 選手紹介が始まる。早口でまくし立てるため何を言っているのか分からない。あまりホームウェイを区別しないので、敵チームをぶっつぶしてやるぞ、という意気込みがわいてこない。スペインサッカーと言うのはこういうものなのかも知れない。そのまま選手が一気に入ってきて写真撮影をした後、試合開始。


 スペインサッカーは攻撃的で世界一楽しく、世界一レベルの高いリーグだと言われている。それがどんなものか、確かめてみようと思う。 一つ言えるのは、両チームともディフェンスラインが異常に高いということ。お互いのディフェンダーが中央近くまで寄っているため、センターサークルを挟んで20人の選手が向かい合っている状態となる。これは去年のJFL入替戦で静産大対佐川印刷で見た。かなり特異ともいえる形で、これだとボールが抜けたらフォワードとディフェンスがヨーイドンと競争して奪い合うようになる。これが面白いのかと言うと・・うーん。


 試合は確かにクオリティが高い。アトレティコフォワードとヴィラレアルディフェンスの駆け引きが絶妙である。オフサイドを取ろうとするヴィラレラル、巧みに上がり下がりするフォワード、そして一本のパスがディフェンスの裏を通り、そのボールをめがけて二人のフォワードが走る。ディフェンスは潰す。


 見ていて凄いな、と思うのは、どの選手も立ち止まってパスを受けない。サッカーの試合は90分あるが、それは大きく分けてアタッキングタイムとインターバルタイムの二つに分けられると思う。チームとしてのレベルの違い、あるいはリーグのレベルの違いは、インターバルタイムをいかに少なくするか、アタッキングタイムをいかに大きくとるかによって決まると思う。当然の事ながらアタッキングタイムのほうが多いほうが見ていて面白いしレベルが高い。


 今日のアトレティコは・・カウンターを多く受け、それをクリアするのに精一杯なケースが多かった。それがこのチームの特徴なのか、今日だけなのかはわからない。まあそれほど調子がよくないのだろうと思う。ただ、悪いなりにも一本の縦パスがきれいにきまり、それがイケイケのヴィラレアルの裏を抜けていったその後、ゴールは生まれた。ああ・・なるほどな、といろんな意味で納得する。


 ホームチームが先制したのでみんな喜ぶ。私の座っている周辺は家族連れが多い。子供が無邪気に喜ぶのを見ると、チームが勝つというのは大事なことなのだな、と思う。アトレティコは調子が良くないので手仕舞いに入ったのだろう。あとは積極的に上がるケースも少なくなり、そのまま1-0で逃げ切った。

 最後の試合、ホームチームが勝ったので私はほっと胸をなでおろした。試合終了の少し前から雨が降り出してきた。スペイン・ポルトガルと今回の欧州旅行は8試合見たことになる。試合のレベルはさまざまだったと思うし、そこまでしてまで見るものなのかとも思った試合もあった。ただ、一つ一つの試合がヨーロッパの文化を色濃く反映しており、生活の中に根付くサッカーを感じられたことは何よりも収穫だった。マイナーリーグの観客の多くは老人で若い人は少なかった。それが根付いていると言えるのかどうかはわからない。その町に住む若い人は年を取ったらこのチームの試合をみるのだろうか、それも自信がない。じゃあ、なんで感じられるのかといえば、そう感じたからだとしか言いようがない。表現の仕方が難しい。


 でも、どのチームも100年近く、あるいはそれ以上の歴史があり、毎年毎年リーグ戦を繰り返したわけだ。その歴史の大部分をずっと観戦し続けた彼らを見ると、どうしても自分と比べてしまう。自分のチームが1部にいるか、2部にいるか、3部に落ちるのか、それは関係ない。自分の住んでいる土地にサッカーチームがあり、日曜日になるとホームゲームがある。だから行く。そこで完結する。その日常を数十年繰り返せば根付いているといえるのではないか。それは立派な文化であると思う。




 何故、スペイン・ポルトガルは日曜日に多くの試合を開催するのか。それはスペインとポルトガルはキリスト教文化だから。月曜から土曜日までは一生懸命働き、日曜日はすべての仕事をやめて遊ぶ。だから試合はゲームなのであり、選手はジョカトーレ(遊び人)と呼ばれるのだ。Jリーグがその文化を持てるかと言うとかなり難しい。ヴァンフォーレ甲府が経営危機に陥り、甲府市が存続のための意見募集をした。その中である主婦が投稿した。「甲府市にはミレーの美術館がある。これは世界に誇れる財産だ。これで充分だ。サッカーチームなんていらない。」と。


 あれから3年。ヴァンフォーレ甲府は甲府市の財産になったのだろうか。アルビレックス新潟は新潟市の財産になったのだろうか。川崎フロンターレは、横浜FCは。有形文化と無形文化。市民一人一人がその違いを理解できないかぎりこの点は解決できないだろう。サッカーチーム、それ自体は普遍なものだ。その町特有の文化ではない。サッカーは阿波踊りのようなものではない。ただ、そこにあるホームチームはその町だけにしかない。ヴァンフォーレは甲府にしかない。日本の市町村3000超ある中で、プロサッカーチームがある町はたった24しかない。プロ野球チームを加えても30だ。カシマやイワタは世界に名前が知られた。単なる港湾都市にすぎないマンチェスターという町の名前は世界中の人が知っている。その貴重さが投稿した甲府市の主婦に理解できるか、だ。今の日本において、これは非常に難しい。Jリーグはこれをやろうとしている。


 名前も知らない町で名前も知らないチームの試合を見ると、そう考えてしまう。何故、このチームはこんなくたびれたスタジアムで試合をし、そして100年も存続しているのか。多分このチームより磐田や鹿島のほうが強いと思うけれど、サポーター文化でみれば絶対にかなわないだろうな、と。200年たてば追いつくかもしれない。それを確認するのは不可能だけれど、できれば自分もこの爺さん達のようにかくありたいと思う。

 試合が終わり、観客はドッとスタジアムを後にする。地下鉄の駅まであるくとそこは人があふれていてとても入れない。もうひとつ先の駅まであるく。多くのサポーターも歩いている。道路が交差点に差し掛かるたびサポーターの数は少なくなり、二つ先の駅で私一人になった。そこは近郊列車の発着駅でそこからターミナルに出て、空港行きのバスに乗った。22時。マドリードバハラス空港に着く。アエロフロートの係員は相変わらず手際が悪かった。どうもダブルブッキングがされているようで、私はビジネスクラスをあてがわれた。例によって飛行機は遅れ、1時間後に離陸した。日本につくのは30時間後である。

 (おしまい)

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