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3日目:UEFAカップ
ハーツ対シャルケ04

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(←前日の続き)

 マンチェスターで一泊した翌朝、今度はエジンバラに向かう。エジンバラはスコットランドの首都で、マンチェスターから列車で3時間ほど北上したところにある。イギリスも北部に差し掛かってくると気温も下がってくる。午後3時半には薄暗くなり始め、天気も曇りから雨になる。車窓はあたり一面牧草地で、羊がのんびりと草をほおばっている。11月にもなればスコットランドの観光シーズンは完全に終わり、あとは寒い冬を待つばかりである。雨が窓ガラスを叩いてくると憂鬱な気持ちになる。この中で宿を探し、スタジアムに行き、チケットを入手して観戦せねばならない。

 17時30分、エジンバラ着。エジンバラはスコットランドの「首都」であり1000年の歴史を持つ宗教都市でもある。駅から外に出ると、古い城郭と大聖堂がいたるところにそびえたっており、その古い建物の間を細い石畳が縫うようにして張っている。そのすべてが暗い夜空の中、オレンジ色のライトアップに照らされているので、かなり不気味だ。私はその道を進み、目指すホステルに着いた。雨は強く降りしきり、あまり出かけたいとは思わない。

 もう寝ようかという気持ちが頭の中をよぎったが意を決していく。行き先はマレーフィールド。スコットランドラグビーの聖地である。対戦カードは地元のハーツ対ドイツのシャルケ04。マレーフィールドでシャルケを見たいがために、ニューカッスルで行なわれているUEFAカップを飛ばしてエジンバラまで来たのである。

 マレーフィールドはエジンバラの郊外にある。近くに駅がないのでバスで行く。外国人がバスで移動するのは困難を伴う。スコットランドは当然英語圏であるが、訛が酷くて何を言っているのか全く分からない。私はインフォメーションでバス路線図を貰い、乗るバスの系統だけ教えてもらってターミナルに行き、バスに飛び乗る。バスにはハーツのユニフォームを着ているサポーターが大勢いるので安心する。バスは20分ほど走り、郊外に出たところでサポーターたちは降りた。私も彼らと一緒に降りる。遠くのほうに煌々と光るスタジアムが見えた。

 マレーフィールドに着いた。流石にスコットランドラグビーの聖地だけあってでかい。スコットランドの聖地というよりはラグビーの聖地なのだろう。イギリスの4大ラグビー場・・イングランドのトゥイッケナム、アイルランドのランズダウンロード、ウェールズのアームズパーク、そしてこのスコットランドのマレーフィールド。4大聖地のうちの一つを見ることができたことにまず感激する。見るのは残念ながらサッカーであるが。

 UEFAカップなんてガラガラだろう、とタカを踏んでいた私はその考えが甘いことを思い知らされる。チケット売り場にずらりと並ぶ人の列にめまいを覚える。当日券は手に入るのだろうか・・少し心配になる。幸い売り切れではなかったが、30分以上は並んだと思う。スタンドに入場したときは試合開始の直前だった。

 

 マレーフィールドスタジアムは美しかった。青いシートにピンク色の蛍光灯という、少し間違えればラブホテルのような配光もセンスのよさを感じる。元々がラグビースタジアムなので両ゴール裏が広く取ってあり、一般のサッカー場と比べると少し遠い。もっとも見る分には問題ない。7万人収容のラグビー場など日本にはないので観客席から見ると新鮮である。明後日はこのスタジアムでスコットランド-オーストラリア戦が開催される。今日の試合がそれであれば・・キルトスカートをはいた屈強な男達で埋め尽くされるのだろう。そのチケットは売り切れ。スコットランドでもラグビーよりもサッカーの方が人気があるが、マレーフィールドに限って言うと、ここはラグビーが第一なのだなと感じる。


ピッチ上のタッチラインは細く薄い。いつでもラグビー用に書き換えられるようにするためだろう。日本でも国立霞ヶ丘でラグビーの試合をするときは、サッカーのクッキリしたタッチラインに混じって弱弱しく22メートルラインがかかれてあったりする。ピッチのタッチラインを見ればその土地の球技の力関係が想像つくのではないか。

 観客はギッシリと埋まっていた。と言ってもスタジアム全体が埋まっているわけではなく、私のいるゴール裏1、2階席とバックスタンド1、2階席が満席であとはメインスタンドがちょぼちょぼと。メインだけ見れば少し寂しいが全体的に見ればよい雰囲気である。

 19時30分、試合開始。私はシャルケのスタメンは大体知っているが、ハーツの選手は全く知らない。私は通常贔屓以外の試合を見るときはホームチームを応援することにしているのだが、今回はどうしてもシャルケを応援してしまう。ロスト、サンド、アイルトン・・毎日ブンデスリーガのサイトをチェックしているとお馴染みの名前ではある。

 試合は一進一退で、好ゲームだった。チームの格としてはシャルケの方が全然上で、私の興味はどれだけシャルケが点差をつけて勝てるかという点にあった。シャルケは監督が交代したとたんチームの調子が絶好調。普通に考えれば負けるはずの無い相手である。

 しかしサッカーというのは実力差だけでは測れない。ハーツはシャルケの要所要所を潰しており、ディフェンスが崩れない。こういうチームは強い。ハーツとしてはシャルケはアイルトンに合わせて来るのだろうと読んでいるはずだ。だからアイルトンを抑えればあとは両ウィングのアザモア、サンドだけのケアで済む。一言でいいきれるほど簡単な試合ではないが、少なくともハーツは良く耐えた。

 試合のレベルは先に見たチャンピオンズリーグに比べればもちろん高くない。でもここが重要なのだが、レベルの高低と面白さの可否は一致しない。もちろんレベルの高い試合は面白いものが多いのは確かだが、逆は必ずしも真ではない。その試合にかける意気込みとか、プライドとか、そのようなものを見せられればサッカーは充分に面白いと感じることができるのだ。


 ハーツサポーターは固唾をのんで見守っていた。スタジアムに漂う緊張感は、ハイバリーやオールドトラフォードの比でははかった。前節を敗れているハーツはこの試合に負けるとグループステージ突破が非常に厳しくなる。どこからとも泣くチャントが沸いて出て、皆併せて合唱する。勝たせたいという気持ちがヒシヒシと感じられる。

 ハーツの選手もなりふりかまっていなかった。体ごと当たってのドツキ合い、削りあいで、試合は止まり、カードが多く出始めた。当然試合は荒れる。ハーツの選手は頑張っていたが、退場者を出した後は劣勢となり、72分、シャルケに先制点を奪われ、これが決勝点となり、0-1でハーツは敗れた。

 私は見ていて非常に悔しかった。本来であれば贔屓にしているシャルケが勝ってうれしい筈なのだが、ハーツの点を取ろうという気持ち、格上相手にもかかわらずラインを上げ積極的にゴールを狙う気持ち、そういうものをヒシヒシと感じられた試合だけに、負けたのが悔しかった。退場となった2枚目のイエローカードは非常に厳しいもので、イングランド基準であれば問題にならなかっただろう。拮抗した試合だっただけに退場者が出るとそこで均衡が崩れてしまう。つくづく惜しい試合だった。

 試合が終わり、スタジアムを後にする。バス停はシャルケサポであふれかえっていた。ドイツ国内でのシャルケサポは高歌放吟し放題で実に陽気な人たちなのだけれど、アウェイの地では大人しい。じっとバスを待つ。後ろに並んだサポと少し話をする。やはり退場となった判定はドイツでも厳しいものだということ。ハーツはいいチームだったということ。シャルケの(フォワード)アイルトンの調子が今ひとつだったこと。私は2年前、ゲルゼンキルヘンでシャルケの試合を見たことを話すと大層喜んでくれた。シャルケは試合に勝ったので皆陽気だ。バスはなかなか来なかったが得に不満はなかった。

 エジンバラ駅に戻り、ホステルに帰ろうとすると雨が降ってきた。古城のふもとを駆け足で歩く。途中マクドナルドで遅い夕食を食べた。時間は午前0時を回ろうとしていた。もう日付は変わってしまったけれど、明日はグラスゴーに行く予定である。

 

(翌日に続く→) 
 
 
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