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5日目:スコットランドプレミアリーグ
セルティック-キルマノック

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(←前日の続き)

 エジンバラでUEFAカップを見た翌日、私はこの旅唯一の観光をした。エジンバラ城、他、古城をいくつか。そしてグラスゴーに移動し、アイブロックスやハンプデンパークに。結局サッカー関係に終始してしまうのが苦しいところであるが、チケットの確保や宿泊に頭を痛めることから開放されたので、いい気分転換になった。旅行に行くのに気分転換も何もないのだが、流石に毎日ゲーム観戦だとうんざりしてくるのも事実である。

 明けて6日。今日は観戦最終日。グラスゴーでスコットランドプレミアシップを観戦する。カードはセルティック対キルマノック。セルティックの入場券は売り切れになりやすいという噂なので、私は朝早くからホームスタジアムのセルティックパークに移動し、当日券を押さえた。 

 いろいろ疲れてきたけれど、これが英国最後の試合観戦である。哀愁のアイリッシュ。プライド・オブ・ケルト。プレーヤーは多国籍軍となってしまったが、スコットランド随一の試合が見れると思うと試合開始までの待ち時間は苦にならない。

 

 午後1時。再びセルティック・パークに移動。時間が余っているので又飲む。こんな昼真からビールばかり飲んで自分自身大丈夫かと思うが、飲まなきゃやってられない、という気持ちもある。周りのスコットランド人も飲んでいる。シラフでサッカーなんぞ見てられるか、というのが基本的な考え方なのだろう。この薄暗い空の下、スタジアムの外で待っているのは辛い。こういう時は苦いギネスビールが実に良く合う。下戸の私であるが、開門のころまでには1パイントハーフ(約1000cc)も飲んだ。足元が少し怪しくなったが幸い意識はしっかりしている。

 セルティックパークは美しいスタジアムだった。イギリスのスタジアムはどこもそうなのだが、椅子の質が良い。日本のようなベンチシートではないのがいい。観客席の最前列まで屋根が伸びていて雨でも問題ない。惜しむらくは観客席後方に太い柱があり、視界がさえぎられることか。目の前に柱があるとは設計者は何を考えているのかと問い詰めたくなるが、これも文化なのだろう。その他はスタンドの傾斜も程よく、恐怖感が無い。観客席の傾斜は急なほど良いという考えは誤りだと思う。見易さを求めるために傾斜をつけるのはよいが観客に恐怖感を持たせるような作りはダメだろう。

 試合開始まであと1時間あるが、観客は早めに集まってきた。イギリスでは珍しい。宗教がバックにあるせいだろうか、やたらと「ファミリー」を強調したイベントが行なわれる。今日が誕生日のソシオの紹介。ファミリー対抗PK合戦など。日本では珍しくないが、イギリスではキックオフ直前まで飲むのが普通だ。

 スタメンの紹介も早めに行なわれ、その後しばしの沈黙。シーンとなった頃を見計らって、「You'll never walk alone」の大合唱が始まり、選手入場。そして試合開始。

 試合であるが、あまり評価できるものではなかった。実力差がありすぎて勝負になっていない。いい試合をしているのはどちらかといえばキルマノックのほうで、セルティックはボールをゆっくりと持ちながらパスの出し手を探すというような感じであった。例えて言うのならJFL時代の横浜FCといえばいいだろうか。実力差がつきすぎるとえてして試合はこのような展開となる。

 別にスローペースで試合をするのはかまわない。しかし観客の立場から言わせてもらえれば、攻める道筋を示して欲しいと思う。例えばフリースペースの探し方で言えば、レシーバーがフリーでボールを受けられる場所に移動すれば、マークも一緒に移動することになり、その結果、元いた場所がフリースペースとなる。そこに別のレシーバーが飛び込み、パスを受ける。そういう流れる動きというのが欲しいのだが、ピッチで展開されるセルティックの動きはあまりにも緩慢で、とてもゴールを攻めているようには見えなかった。

 隣のスコットランド人と少し話す。 私「あんまり良くないね。」 彼「ラーションがいた時はもっと点が取れてた。」セルティックの希望の星、ヘンリク・ラーションは今年バルセロナに移籍した。9月に行なわれたチャンピオンズリーグではセルティックはバルセロナと対戦。そのラーションに点を取られている。現在のスコットランドは地盤沈下が著しく、セルティックはチャンピオンズリーグでグループリーグ敗退。レンジャーズはチャンピオンズリーグ予備予選敗退。さらにUEFAカップのグループリーグ敗退、ハーツはUEFAカップグループリーグ敗退。ダンファームリンはUEFAカップの予備予選敗退と全く実績を残せずにいる。そしてナショナルチームのフォクツ監督の解任。サポーターにとっては辛いシーズンだろう。

 もっともセルティックの不幸というのは基本的にサシで試合ができるチームは国内ではレンジャーズしかない、というところだろう。だからチャンピオンズリーグではダメダメでも国内リーグでは無敵というアンバランスな状況になっている。だからスター選手が国外に出てしまう。これはレンジャーズも同じで、レンジャーズのエース、ガトゥーゾもミランに言ってしまった。スコットランドという小さな「国」でチームのレベルを保つのは本当に難しいことなのだなと思う。

セルティックは攻め続けるがゴールが割れない。しかしサイドから攻め続けたのが功を奏しフリーキックを得た。これをセルティックが決めて1-0。まずまずの結果で前半終了。

 後半も展開は全く同じだった。内容は酷い。まず選手が動かない。ピッチに緊張感が感じられない。まだ後半開始直後であるが、スタジアムからは帰る人が続出してきた。なんだかなあ、と思う。セルティックが攻めてこないと判断したのだろう。今度はキルマノックがカウンターを仕掛けてきた。これをセルティックが奪い返し、スペースにボールが放りこまれてくる。キルマノックはきちんと守るのだが、レフェリングがだんだん辛くなる。そしてキルマノックは自陣ペナルティエリア内で普通にクリアしたプレーにファールを取られる。セルティックPK!。ちょっと待て!

 私は呆れた。いくらなんでも滅茶苦茶だ。キルマノックは懸命に抗議するも聞いてもらえない。退場者を出してさらに追加点をとられ2-0となる。事実上勝負は決した。観客がドンドン帰り始める。試合はあと20分以上あるのだが、スタジアムに空席が目立つようになる。これでいいのか?私自身いたたまれなくなった。試合は捨て身のキルマノックが1点を返し、そこで終了した。私は軟禁をとかれたような気分でスタジアムを後にした。

 午後5時。スコットランドの夜は早い。あたりは真の闇である。暗く冷たい雨が降る中、帰るのは結構しんどい。セルティックのソシオたちは専用バスが用意されていて、続々とスタジアムを後にする。私はそうでない人たちと一緒にスタジアム前のバス停で帰りのバスを待った。

 20分ほど待ったのだろうか。帰りのバスに乗り込むと眼鏡の内側が真っ白に曇った。バスはそれほど混んでおらず、買い物帰りのオバサンと相席になった。グラスゴーセントラルに着いたら私はパブで少し飲み、グラスゴー最後の夜を過ごした。


 

 

(おしまい) 
 
 
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