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初日:RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(後編)




(前編からの続き)
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初日
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(前編)
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(後編)

2日目
バイエルン - レバークーゼン(前編)
バイエルン - レバークーゼン(後編)

3日目日
リエージュ - ラ・ルヴィエール

4日目日
マーストリヒト-エクセルシオール

最終日
帰国へ

 一般的にブンデスリーガにおける試合はチケットの種類が非常に細かく設定されており、それは下部リーグでも同じである。私が買った東側ゴール裏だけでも5種類ある。価格は5ユーロ~7ユーロでそれほど高くないのだが、どうやってチケットチェックをしているのだろうかと少し気になる。実際に入場してみるとチケットチェックをしているのはメインスタンドだけで、それ以外はどこに座ろうが自由というとんでもなくアバウトな席割で、これじゃあチケットを売り分ける意味がない。私が買った席はゴール裏中央であるが、ここは「一生懸命応援する人たち」の席なので私は一番端のほうにいった。ゴール裏もかなり埋まっているが、ここはまだまばらで余裕がある。しかしほどなくしてここも埋まる。端っこに来るのは家族連れと若い女の子で華やかだ。しかし彼女達から見れば私は見かけない東洋人からなのだろうか、横目でジロジロ見られる。

 試合開始が近づいてくる。バックスタンド立見席は既に満杯。立錐の余地もなし。ゴール裏も人口密度が高くなってくる。若いお姉ちゃんに囲まれるのは悪い気持ちはしないが息苦しい。選手が練習を始める。デュッセルドルフの選手が出てくると一斉にブーイングが始まる。すごい音量でかなりびびる。エッセンの選手が出てくると逆に歓声が上がり、サポもクラブも臨戦態勢に入ってくるのがわかる。臨戦態勢と書いたのは、ピッチに警察・消防・救急が3点セットで待機し始めたからである。警察は珍しくないが、消防と救急とはコレいかに。早くもデュッセルドルフサポーターから爆竹が投げ込まれる。この先の展開は大体予想はしているけれどなんとなく背中に緊張が走る。

 選手紹介。まずはエッセンから。最初にスタジアムDJがファーストネームを呼び、次にサポーターがファミリーネームを呼び返すという掛け合いは上位リーグと同じ。違うのはアウェイチームの紹介だった。まずスタジアムDJがファーストネームを呼ぶ。間髪いれずにサポーターが全員で「アスホー!!」と叫ぶ。後ろの子供も隣のブロンドのお姉ちゃんもみんなで声をあわせて「アスホー!!」と叫ぶのである。スタジアムDJが「クラウスーーー」と呼ぶとすぐに「アスホー!!」。DJ「ブルーノー・・」「アスホー!!」デュッセルドルフの選手の名前は全員「アスホー」で片付けられてしまった。お姉ちゃんですらそう叫ぶところにエッセンサポの心意気を感じてしまう。スタンドが立見席で一体感を感じやすいからかもしれない。

 選手紹介が終わるとほどなくして選手入場。みんなで声を合わせて「エッセン♪エッセン♪エッセン♪エッセン♪エッセン♪エッセン♪」とスタンドに大合唱が響き渡り選手が入場してくる。いい風景だ。何年も何十年も続いているのだろう。この意識の統一は2年や3年でできるものではない。やっぱりいいなあ。きてよかったなあと思う。そして試合開始。良かったなあと思ったのはここまで。試合が始まるとその内容はまさに「アスホー」なものであった。

 ミスが多い。パスがつながらない。展開が遅い。3部リーグだから仕方がないとはいえ、イライラが募る。横浜FCのほうがまだマシなサッカーをしている。この大観客にこの内容ではミスマッチもいいところだと思う。サポは良く切れないなと思っていたら案の定、指笛が鳴り始めた。(下に続く)

ブンデスリーガの特徴はボディコンタクトが激しいことである。だからフォワードは逃げないで勝負するしディフェンスは身体を張って留める。ヨーロッパは騎士道精神があるからだろうか、フォワードはゴール前でボールを持てば必ずシュートを打つ。どこぞのヘタレチームの用に横にパスを出したりしない。Jリーグで良く見る、センタリングをするフォワードというのはいない。こういうところはさすがだなあと感心して観るのだが、あんまりつながらないと「もっとサイドを使えよ」と思ってしまう。我ながら都合がいいと思う。最初は敵に対してブーイングなり指笛なりを吹いていたのだが、その内自チームの選手にも向け始められる。これじゃあサポートにならないだろうと思うかもしれないが、私はおんなじ展開を三ツ沢球技場でなんども見せられているので彼らの気持ちは実によくわかる。

なんの工夫もなく前半終了。ため息まじりのまま裏の売店でビールとソーセージを買い込みぱくついている。レベルが低いと言ってしまえばそれまでだが、周りの観客もイラついているみたいなので今日がダメダメなだけかもしれない。ダービーだから気負いすぎている面もあるのだろう。ゴール裏に戻るとサポーターが花火をいっせいにつけている。なかなかすごいが風の逃げ場がないのでスタンド内に煙が充満する。非常に煙い。



後半が開始。展開変わらず。痺れを切らしたデュッセルドルフサポーターが爆竹と発炎筒を投げる。アウェイサイドのピッチに炎がつきスタジアムに煙が舞う。あわてて警察と消防が駆けつける。そして私のいるゴール裏からも発炎筒が投げ込まれる。かなりまずい。

私の前後左右は人でびっしり埋まっているので煙が奥に充満すれば酸欠になる。奥の観客がパニックを起こして前に殺到すれば私は手すりに挟まれて圧死してしまうかも知れない。一瞬、ヒルズボロの悲劇が脳裏に浮かんだが、煙はそれ以上撒くことはなく、徐々に視界が開けてきた。Jリーグでこれをやれば間違いなくその場で試合中止となるところであるが、ゲームは止まらず粛々と続く。

 試合はデュッセルドルフの選手が疲れてきたせいか、動きが悪くなり70分過ぎにエッセンが先制する。そして前がかりになったデュッセルドルフの隙を突いて2点目を追加。元々エッセンのほうが格上なこともあり、ここで勝負はついたといってよかった。

 しかしサポーターは黙ってはいない。隔離席に押し込められたデュッセルドルフのサポーターは爆竹と発炎筒を次々とピッチに投げ込む。ピッチに投げ込まれた発炎筒は警備員が消しに走るが審判は試合を止めない。デュッセルサポが何かことを起こすたびに私の前を警官隊が粛々と移動していく。

 ゲームとは関係ない部分でこの先の展開が気になったが、これ以上は何も起こらず試合終了。2-0でエッセンの勝ち。私は試合終了のホイッスルを聞いた直後、ダッシュでスタジアムを後にした。帰りのバスを早めに確保したいのと、この先のトラブルに巻き込まれるのがいやだったためである。

 幸い来た時に降りたバス乗り場には帰りのバスが止まっており、私を乗せると程なく発車した。夢か悪夢かなんともいえない不思議な感覚だ段々薄れ、ほどなくエッセン中央駅についた。

 エッセン駅は警官が大挙して並んでいた。3部リーグの試合とは思えなかった。私はケルンに戻るのだが、エッセンからケルンへは途中デュッセルドルフを通る。デュッセルドルフ方面のホームに上がるとホームの前半分を警官が封鎖し、入れないようにしている。私が乗る予定だった特急はタッチの差で出てしまい、次は1時間後である。ホームで待っているとエッセンサポが続々と上がってきた。試合に勝ったので皆機嫌がいい。「シャイセーシャイセーデュッセルドー」と合唱する声が人気のいないホームに響く。もう夜の10時を過ぎている。ほどなくしてデュッセルドルフサポが到着。ホームに上る階段は警官が封鎖しており、デュッセルドルフサポは上がれない。階段がエッセンサポとデュッセルドルフサポは完全に分離されていてデュッセルドルフサポはずっと前方の入口から入る。私はその様子をぼけーっと眺めていたが、警官には不審に思えたのか、パスポートの提示を求めてくる。緊張感がかなり高い。

 ほどなくコブレンツ行きのRE(快速)が入ってきた。前1両は誰も乗っておらずデュッセルのサポはそこに押し込められる。養豚車に積み込まれる豚のように厳重に見張られながら粛々と乗り込み列車は発車。その後、フランクフルト行きの特急が入線してきたのでこれに乗り込み、私もエッセンを後にした。少し疲れた。

 試合中はどうなることかと思ったが、3部リーグはなかなか楽しかった。日本はおろか、ブンデスリーガ1部でも見られることが少なくなった昔ながらのサッカーがそこにあった。エッセンも新スタジアムが出来上がればこの光景は見られなくなるかもしれない。「エッセンの悲劇」とやらが起きる前に快適なスタジアム観戦に移れるのであればそれはそれでいいことなのであるが。

 特急に乗って約1時間、午前0時前、私はケルンについた。明日はミュンヘンに移動。アリアンツ・アレーナでバイエルン・ミュンヘンの試合を見る予定である。

  翌日に続く
 
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