後半が開始。展開変わらず。痺れを切らしたデュッセルドルフサポーターが爆竹と発炎筒を投げる。アウェイサイドのピッチに炎がつきスタジアムに煙が舞う。あわてて警察と消防が駆けつける。そして私のいるゴール裏からも発炎筒が投げ込まれる。かなりまずい。
私の前後左右は人でびっしり埋まっているので煙が奥に充満すれば酸欠になる。奥の観客がパニックを起こして前に殺到すれば私は手すりに挟まれて圧死してしまうかも知れない。一瞬、ヒルズボロの悲劇が脳裏に浮かんだが、煙はそれ以上撒くことはなく、徐々に視界が開けてきた。Jリーグでこれをやれば間違いなくその場で試合中止となるところであるが、ゲームは止まらず粛々と続く。
試合はデュッセルドルフの選手が疲れてきたせいか、動きが悪くなり70分過ぎにエッセンが先制する。そして前がかりになったデュッセルドルフの隙を突いて2点目を追加。元々エッセンのほうが格上なこともあり、ここで勝負はついたといってよかった。
しかしサポーターは黙ってはいない。隔離席に押し込められたデュッセルドルフのサポーターは爆竹と発炎筒を次々とピッチに投げ込む。ピッチに投げ込まれた発炎筒は警備員が消しに走るが審判は試合を止めない。デュッセルサポが何かことを起こすたびに私の前を警官隊が粛々と移動していく。
ゲームとは関係ない部分でこの先の展開が気になったが、これ以上は何も起こらず試合終了。2-0でエッセンの勝ち。私は試合終了のホイッスルを聞いた直後、ダッシュでスタジアムを後にした。帰りのバスを早めに確保したいのと、この先のトラブルに巻き込まれるのがいやだったためである。
幸い来た時に降りたバス乗り場には帰りのバスが止まっており、私を乗せると程なく発車した。夢か悪夢かなんともいえない不思議な感覚だ段々薄れ、ほどなくエッセン中央駅についた。
エッセン駅は警官が大挙して並んでいた。3部リーグの試合とは思えなかった。私はケルンに戻るのだが、エッセンからケルンへは途中デュッセルドルフを通る。デュッセルドルフ方面のホームに上がるとホームの前半分を警官が封鎖し、入れないようにしている。私が乗る予定だった特急はタッチの差で出てしまい、次は1時間後である。ホームで待っているとエッセンサポが続々と上がってきた。試合に勝ったので皆機嫌がいい。「シャイセーシャイセーデュッセルドー」と合唱する声が人気のいないホームに響く。もう夜の10時を過ぎている。ほどなくしてデュッセルドルフサポが到着。ホームに上る階段は警官が封鎖しており、デュッセルドルフサポは上がれない。階段がエッセンサポとデュッセルドルフサポは完全に分離されていてデュッセルドルフサポはずっと前方の入口から入る。私はその様子をぼけーっと眺めていたが、警官には不審に思えたのか、パスポートの提示を求めてくる。緊張感がかなり高い。
ほどなくコブレンツ行きのRE(快速)が入ってきた。前1両は誰も乗っておらずデュッセルのサポはそこに押し込められる。養豚車に積み込まれる豚のように厳重に見張られながら粛々と乗り込み列車は発車。その後、フランクフルト行きの特急が入線してきたのでこれに乗り込み、私もエッセンを後にした。少し疲れた。
試合中はどうなることかと思ったが、3部リーグはなかなか楽しかった。日本はおろか、ブンデスリーガ1部でも見られることが少なくなった昔ながらのサッカーがそこにあった。エッセンも新スタジアムが出来上がればこの光景は見られなくなるかもしれない。「エッセンの悲劇」とやらが起きる前に快適なスタジアム観戦に移れるのであればそれはそれでいいことなのであるが。
特急に乗って約1時間、午前0時前、私はケルンについた。明日はミュンヘンに移動。アリアンツ・アレーナでバイエルン・ミュンヘンの試合を見る予定である。
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