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4日目:マーストリヒト - エクセルシオール

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初日
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(前編)
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(後編)

2日目
バイエルン - レバークーゼン(前編)
バイエルン - レバークーゼン(後編)

3日目日
リエージュ - ラ・ルヴィエール

4日目日
マーストリヒト-エクセルシオール

最終日
帰国へ
(←前日からの続き) 

 サッカー抜きで行きたい街、というのがある。私の場合、落ち着いた町、特に何百年も変わらないで来た町というのに惹かれる。ドイツのノイヴァンシュタイン城やメルヘン街道のように「ココが売り」というものがないけれど、町全体が歴史遺産というようなそんな街にいきたい。

昨晩泊まったリエージュや今日行く予定のマーストリヒトなどはまさにそういう街で、歴史自体はそれこそローマ時代には出来ていたそうだ。

 リエージュ・ギーメンス駅8時30分発のマーストリヒト行き普通電車に乗る。リエージュとマーストリヒトは電車で30分。この間に国境を越える。国境を越えるとすぐにパスポートコントロールがあった。9:00マーストリヒト着。ここで、今日の観戦予定カードであるオランダ2部、MVVマーストリヒト対エクセルシオールの一戦が行われる。

 試合開始は夜の8時からなのでまだ時間がある。マーストリヒト観光もいいが、その前にすぐ近くにあるケルクラーデという街に行ってみようと思う。ケルクラーデは昨年6月、ワールドユースが行われた街で、ここで日本はグループリーグを戦った。麦畑の中を電車で1時間ほど走ると片面一面の小さなホームについた。そこが終着、ケルクラーデセントラール駅である。周辺は何もない。北海道の無人駅に来たようだ。地図を見ると市街地はここから2キロほど離れたところにあり、スタジアムは町とは反対側に5キロほど離れたところにある。タクシーがあればいいのだが、そんなものは停まっていない。さて、どうやって行こうか。

 5年くらい前なら迷わずヒッチハイクをするところだが、既にそういう気力はない。気合入れて歩くことにする。ケルクラーデ駅は丘の上にあり、スタジアムに行くには一旦降りてもう一度上る。

 オランダ郊外の道路は周囲が牧草地で見晴らしがよく、歩いていると気持ちがいい。霧雨が拭いているがそれほど困らない。オランダエールディビジ、ローダJCの練習場の脇を通過し、さらに道を登ると集落に出る。ここを右折し坂を延々と登るとローダJCのホームスタジアム、スタディオン・リンブルグに着いた。周囲は霧が濃く、前方の建築物がかろうじてスタジアムだと判別できる程度である。

 スタディオン・リンブルグは収容人数は2万人程度、特徴もないスタジアムなのでスタジアムツアーなどはやっていない。でも係員に頼んでみればひょっとしたらピッチを撮影させてくれるかも知れない。スタジアムの周囲を歩いてみると係員がスタジアムの清掃作業をしていた。ダメモトで聞いてみる。私「こんにちは。日本から来たんだ。ちょっとグラウンドを見せてもらえないか?」 係員は「写真を撮りたいのか?いいよ。ちょっと待ってな」と快諾してくれた。

 私は驚いた。一介の整備員にこういう融通性があることに感激した。私は日本で陸上競技場の写真も取っているけれど、競技場の係員にピッチの写真を撮らせてもらうことは難しい場合が多い。どういう目的で・・と説明しなければならない。後で知ったことだが、ヨーロッパではグラウンドを写真に撮るのが趣味として認められているらしい。基本的には自由に撮らせてくれるとのことだ。なにかこう、負けているような気がする。こういう面ですらヨーロッパと日本の意識の違いを感じてしまう。

 グラウンドに入れさせてもらう。特徴のある屋根や黒と黄色の観客席に見覚えがあった。アビスパの中村北斗がクインシーにぶっちぎられた光景が鮮明に思い出される。ただあの時は芝が本当に美しかった。今はピッチが剥げ、水溜りが浮き出ている。状態は非常に悪い。


 何枚か写真を撮り、お礼を言って外に出る。スタディオン・リンブルグはスーパーやレストランを併設していて、一大ショッピングセンターになっている。日本で言うと仙台スタジアムのようなもので、結構にぎわっている。私はタクシーを探した。さすがに帰りも駅まで5キロ歩くのは勘弁してほしかった。でも見つからなかった。あちこち探したがタクシーは止まっていなかった。オランダ人はケチで有名である。タクシーには乗らずに自転車できているのかもしれない。

やむをえず歩いて駅に戻る。帰りはしんどい。5キロ程度の距離なのに駅に着くまでには1時間半もかかった。ケルクラーデ駅に着いたときには列車が発車した直後だったので、無人の駅舎で1時間待ち、次の列車で帰る。マーストリヒト駅に着いたときは午後3時を回っていた。そのまま駅前のホテルにチェックインし、少し休む。駅とスタジアムを往復するだけで10キロ歩いたことになる。歩数で言うと2万歩である。1日でここまで歩いたのは最近では記憶にない。

 非常に疲れているが、これから観光に出かける。マーストリヒトは町全体が観光地で数百年前の城がそのまま残っている。マース川の川沿いを歩き、城跡を登り、ペストハウスを見て、バーで酒を飲む。3時間程度かけて町全体をくまなく歩き、ホテルに戻った。5キロは歩いたであろう。時計は夜の6時。日没の遅いオランダでも、とっぷりと日が暮れ、あたりはもう夜である。

 とんでもなく疲れているが、これからサッカーの試合を見に行く。マーストリヒト対エクセルシオールの試合が午後8時から始まる。試合開始まであと2時間。私はホテルを出た。

 マーストリヒトのスタジアム、デ・ジュッセルスタディオンは駅からそれほど離れていない。せいぜい1キロ程度だろうか。しかし私はもう100メートルも歩きたくないのでタクシーでいく。ちょうど駅前に止まっているので乗り込んで出発する。1キロ程度の距離をタクシーが真面目に走るか怪しいものであるが、果たしてとんでもなく遠回りして走る。気持ちがやさぐれているので、まあいいやとふんぞり返る。しばらく走ると前方に4基の照明灯が煌々と灯っているのが見えた。よかった。今日は試合がある。ゆっくりと観戦しよう。

 直線距離で駅から1キロ程度のスタジアムに15ユーロ(約2000円)も払ってタクシーを降りる。目の前はサッカーチームマーストリヒトのクラブハウスである。タクシーの運転手の話だとスタジアムはこの裏らしい。私はクラブハウスの建物に沿って裏手に回った。

 スタジアムに明かりは点いてなかった。チケット売り場も開いていなかった。つい、ほんのいましがたまで灯っていた照明灯も今は何故か見えない。私は不安になりながらもスタジアムと思われる建物に沿って歩いた。チケットを買いたい。中に入りたい。タクシーを降りて右に曲がり、さらに歩いて右に曲がり、もう少し歩いて右に曲がり、さらに歩いて右に曲がると元のタクシーを降りた場所に戻ってしまった。

 いやな予感がする。絶望の空気が漂ってくる。例によってサポーターはいない。いくら2部でも試合開始1時間前にスタジアムが無人というのはおかしいだろう。まさか・・・まさか・・まさか・・・私の頭の思考回路がフリーズとループを繰り返す。

 私はスタジアムの近くにあるマクドナルドに行った。店とチームは関係ないかも知れないが、試合があるのとないのでは、アルバイトの数が全然違うはずで、少なくともマネージャークラスは試合があるかないかは知っているはずだ。私は店に入り、アルバイトのお姉ちゃんに今日、試合はあるのかと聞いた。

 彼女はあっさりと答えた。「Cancelled」

 私はもう何も考えられなかった。悔しいとか残念とか、そういう感情というのが沸かなかった。条件反射的に店を出る。改めてスタジアムを見る。消えた照明塔が寂しさを増幅させる。

 タクシーは出てしまっている。私は駅まで歩いて帰ることにした。スタジアムは駅の裏手にある。こういうところは概して治安が悪いのだが、なにしろ虫の居所があまりにも悪いのでかまわずドンドンあるく。絡んでくる奴がいたら張り倒してやるくらいの気持ちだった。

 駅はスタジアムのすぐそばだった。スタジアム前の大通りを渡ると教会に出て、その横の道路を数百メートル程度歩くと駅についた。この程度の距離に2000円も払ったのかと思うと正直ばかばかしくなった。今、気がついたのだが私は夕飯を食べていない。そんなものを食べる余裕もなかった。ホテルに入るとシャワーを浴び、すぐに寝た。ホテルはセントラルヒーティングが入っているので暖かい。ベッドにもぐりこむと直ぐにねた。ずいぶん長い一日だった。

(翌日に続く→) 

 
 
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