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第6節 バンコク・ユニバーシティ 対 川崎フロンターレ
(バンコク:ロイヤルアーミースタジアム)
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2日目:バンコク・ユニバーシティ対川崎フロンターレ
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スタジアムの前には川崎サポーターがたむろしていた。インドネシアや韓国遠征の時に知り合った人もいて話が弾む。普段は等々力の2階席で一人で観戦しているけれど、ゴール裏で気持ちを合わせて応援するというのはいいものだと思う。
試合開始90分前、西鉄観光の人が来て日本人向けにチケットを配り始めた。一枚50バーツ(約180円)。私は180円でサッカーを見た記憶がないので定価ベースなら間違いなく最安値だ。バンコク大スタッフの人もみんなフレンドリーでチケットをもぎってくれる。このグループリーグ、スタッフの対応の良さで見ればアウェイというのは存在しなかった。概ねどこでも親切だった。靖国でもめてた頃なら状況は違っていたかもしれないが、むき出しの敵意というのはなかったと思う。
フロンターレサポーター達は集団でメインスタンドアウェイ側端に入場する。予想していたよりずっとサポーターの数が多い。50人以上はいたと思う。こんな消化試合を見にこれだけの人が海外に行くというのはすごいことだ。フロンターレの財産というのはJ1昇格でもACL参戦でもなく、こうやって地道にサポーターを増やしていった実績だろう。浦和レッズが成功したサッカーチームの代表のように語られているけれど、サッカー不毛の土地からチームを作り上げた実績で見れば川崎だって全く負けてはいない。
スタジアムの雰囲気はぬるかった。順位も決まった最終戦だからというのもあるが、タイ側に緊張感がなかった。一応私の前に小銃を携えたアーミーがいたけれど、警戒している様子はなかった。スタンドとピッチの間のゲートも開いていて、サポーター達は代わる代わる陸上トラックに降りて記念撮影をしている。
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スタンドは蒸し暑くじりじりと汗ばんでくる。まだ日は高い。コンクリートの立ち見席に腰を下ろしているとスタメンの発表があり、FIFAアンセムが流れ、選手が入場してきた。すでに勝ち抜けが決定しているチームと敗退が決定しているチームの試合なのでスタメンは両方とも控えメンバーが中心である。私自身初めて見るフロンターレプレーヤーがいる。彼らがどの位やれるのかそれはそれで興味がある。
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試合は予想外に激しかった。少なくとも両チームとも一生懸命やっていた。もっとも選手間のタイミングがあわないのはやむを得ないことで、パスミスが目立ってしまう。焦りが出るモノではないが、勝って日本に帰りたいという気持ちは選手もサポーターも同じだった。
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試合はそれでも少しずつ動いていく。チョンテセの先制、そしてPK失敗、同点に追いつかれ、そして突き放し。これが決勝トーナメント進出をかけた大一番だったらとても立っていられない状況であった。でもこの試合だって選手は自らの選手生命をかけて戦っている。チームの中で2番手、3番手の彼らにとって来年は常にない。ここで結果を、実績を積んでトップチーム入りをしたいのはスタンドから見ていてもよくわかる。
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競り合いの中で佐原が接触、負傷交代する。いままで私は佐原をそれほど評価してこなかったのだけれど、消化し合いの中で全力を尽くす彼の姿はチームの若手選手に伝わるモノがあったと思う。偏見というのは怖いモノで、負傷して動きが悪くなった彼を見て、ダメだなあとつい思ってしまう。苦しさの中で全力を尽くしていた彼の気持ちはくみ取れなかった。交代して初めて負傷していたことに気がついた。私はまだまだ見方が甘い。
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スタジアムに照明が入り、日も暮れていく。気温も湿度も下がってきて過ごしやすくなる。スコアを突き放したフロンターレは残り時間を支配して2-1でタイムアップとなった。5勝1分け勝ち点16。堂々とした成績だと思う。
試合が終わり、選手達がサポーターエリアに近寄ってくる。目の前で万歳が始まる。まだ若い彼らを見るとトップチームに上がってほしいと思う。競争がチームを強くするとかそういう理屈ではなく、純粋に戦い抜いた報いを次の試合で出させてあげたいという、人間としての気持ちだった。
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選手が引き上げ、横断幕も片付けていく。ツァーできた人たちも引き上げる。私は残った人たちに挨拶をしてスタンドを後にした。広大な敷地を抜け、大通りに出たところでタクシーを拾う。これでグループリーグは終わった。私はカオサン通りでタクシーを降り、食堂でタイ人達と飲みまくった。メコンウィスキーだと思うが妙に口当たりの甘い酒で悪酔いする。背中に寂しさと虚しさを覚えてくる。私はまた飲んだ。ちゃんとホテルに帰ったのだからつぶれてはいなかったと思う。明日は帰国の日である。
(続く)
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