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第5節 天津泰達 対 川崎フロンターレ


(中国:天津泰達足球場)

天津泰達 対 川崎フロンターレ

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準々決勝第一戦 
川崎フロンターレ-
名古屋グランパス

準々決勝第二戦 
名古屋グランパス-川崎フロンターレ


 (前回からの続き)


現在の時刻は午後5時。試合開始時刻は午後7時30分。普通に考えると試合開始まで2時間30分もあれば余裕で間に合うはずである。しかしここ天津では問題が一つあった。今、私がいる天津市街区と、試合会場の天津経済特区地区との間は30キロの距離があり、移動がかなり難儀することだった。移動手段は「濱海快速」という新交通システムで、これに1時間近く乗る。スタジアムは終点の手一つ会展中心駅から徒歩5分で近いのだが、この濱海快速は天津市街は通らない。最寄り駅の中山門まで行くのも移動も面倒くさい。面倒くさいのはもういやだ。だから私はタクシーで直接スタジアムに行く予定を立てた。30キロともなると距離があるが、天津のタクシー代は最初の2キロが7.5元(約120円)、以降、1キロごとに1.7元(約30円)と格安なのでた100元(1600元)もみれば到着するだろう。私はこの問題を軽く考えていた。


 その考えは甘かった。


 タクシー自体は沢山走っているのだが、経済開発区まで、と言うとドライバーはみんな嫌がるのである。細かいことは言葉が通じないのでわからないが、とにかく乗せてくれない、という状況だった。これはまずい。まず理由はわからない。日本なら長距離客は歓迎されそうなものだが天津は違うのだろうか。現在は夕方で勤務終了の時刻が近づいていることなのか?それとも言葉の通じない外国人を乗せて長距離を走らされたあげくに踏み倒されたり揉めたりするのがイヤなのだろうか?それとも単純に道を知らないだけなのだろうか・・・・・うーーーーん。


 私は天津市のことは全く知らない。、私が持参してきた 「地球の歩き方:中国全土編」は600ページもあるくせに天津市街については3ページしか割り当てておらず、使い物にならなかった。いずれにしろ、このままではスタジアムにたどり着けない。困ったことになった。


私は一計を案じた。


 タクシーを止め、運転手に「天津ニッコーホテルまで」と告げた。運転手は問題なく、私をホテルまで連れて行ってくれた。ここから勝負が始まる。私の予想通り、日航ホテルのコンシェルジェ嬢は日本語が通じた。私は彼女にカクカクシカジカ理由を説明し、スタジアムに行きたいんだ。ホテル前で客待ちしているタクシーの運転手にスタジアムに行くよう指示を出してもらえないだろうか、そうお願いした。


 彼女は難しい顔をして考え込んだ。彼女の説明によると、まずこの辺の運転手はスタジアムを知らない。そして経済開発区までは距離がありすぎてタクシー代がかかりすぎる。私としては勧められない。やめたほうがいいよ。そう言った。ではどうしようか・・・・・


 悩んでいる彼女の姿を見て、ベルボーイやドアマンが集まってくる。彼女は地図を広げ、ここに行く手段をみんなに相談した。あーだこーだと中国語で激しい議論が始まったが私は何を言っているのかわからないので端で聞いているしかない。ひとしきり議論した後、彼女はすっきりとした顔をして私を呼び寄せた。
 

 彼女の提案は、ここから7キロほど離れた「中山門」(チュンセンモン)までタクシーで行く。そこに濱海快速の駅があるのでそれに乗ってスタジアムに行けば良い、ということだった。ありがたく、かつ、非常にまともな提案だったが、その方法は最初からわかっていて、時間がかかるから私はタクシーで行きたかったのだ。


 私は自分の行動に限界を感じたので、あきらめて彼女の提案を採用した。彼女はタクシーの運転手に、この日本人を中山門駅まで連れて行くよう指示を出した。彼女は私に天津市の地図を渡した。最後に愛想良く「サッカーの試合、勝つといいですね。」と言ってくれた。どこまで本気で言っているのかわからないが、客でもない私にここまで時間をかけて応対してくれたことは驚嘆に値する。日系ホテルだからかもしれないが、嬉しかった。


 ホテルから中山門駅までは距離はそれほどないのだが、非常に渋滞していて、なかなか到着しなかった。やっと着いたときは、既に午後6時半で、試合開始時刻まで1時間しかなかった。ダッシュでホームに駆け上がると、まさに電車が発車しようとしているところで、ギリギリ間に合った。電車はすぐに発車した。車内は明らかにサッカー観戦者とおぼしき人で一杯だった。フロンターレのユニフォームを来ている私には少し緊張が走る。
 

 シャオリーベン(小日本)とか、リーベンクイツ(日本鬼子)とか罵声を浴びせられる覚悟をしたが、そういう空気は全くなかった。私の目の前に天津のユニフォームを着たサポーターが座っており、彼は愛想良く「ここに座らないか」と詰めてくれた。みんな愛想良く席を詰める。「熱烈歓迎、川崎球迷」、そんな感じだった。

 みんな口々に私に質問する。非常に簡単な英単語のみの会話なので、意思疎通には限界があったが、概ね話は通じた。名前とか、Jリーグのこととか、川崎の町のこと、とか。天津のことや中国超級のことを聞けたのは参考になった。彼らにとって北京と上海は大嫌いで、ここを応援するくらいなら川崎を応援した方がよい、とまで言った。この会話、一昨年、川崎サポでも同じ議論をした覚えがある。


 電車に乗って1時間。時刻は午後7時25分、電車は会展中心駅に着いた。目の前にはまばゆく光るスタジアムがある。私はダッシュで駅を降りた。スタジアムに向かう途中、アジア・チャンピオンズリーグの入場行進曲が聞こえてきた。キックオフには間に合いそうもないが、この時間であれば満足して良いだろう。スタジアム周辺にはダフ屋が沢山いた。定価50元(760円)を30元(470円)で買う。キックオフなので値切れば10元程度で買えると思うが、試合を優先するのでそこで妥協しスタジアムに入る。4階まで階段を上るのは非常に疲れたが、なんとかたどり着いた。


 試合の展開については思い出したくもないので省略する。まあ酷い主審と反日のスタンド、ハードタックルに行く中国人選手と、これだけ条件がそろえばサッカーにならないだろうなと思う。ただ、そういう条件がマトモだったとしても、この日のフロンターレが試合に勝てたかどうかはかなり疑わしかった。気持ちが入っているのは充分に見て取れるのだが、浮き足だっていて繋がりのないプレーに終始していた。試合終了直前、トンマージに決められて1-3で試合終了。




 試合は終了した後、予想通り私達はスタジアムで足止めを食らった。1時間とは言わないが、結構長く待たされた。スタジアムからすぐに出ることはできないだろとは予想していたから別に何とも思わないけれど、10時近くになっても足止めは結構辛い。照明が落ちて無人となったころ、ようやく解放された。


 川崎サポーター達と駅に向かう。スタジアムから駅までは徒歩5分程度だが、道は暗かった。私は天津のサポーターに煽られようが唾吐かれようが気にしないけれど、女性は気持ち悪いだろうなと思う。帰りの電車は天津サポーターも乗り合わせたが、特にトラブルもなく中山門駅に着いた。


 夜もだいぶ遅くなってきたが、サポーター仲間で飲み会をやることにした。本来なら祝勝会なのだが、この結果なので別の名目になる。親睦会か残念会か反省会か、まあなんでもいいけれど、私自身飲まなければやってられない気持ちであった。


 夜の遅い中国でもさすがに11時を回ると店は閉まっている。それでもいくつかは開いていた。そのうちの一つ、中華料理店に入って、みんなで労をねぎらった。初めて会う人もいたけれど、旧知の間柄のごとく、飲んで食べた。お腹いっぱい食べて50元(760円)もしなかったと思う。試合は残念だったけれど、楽しい夜だった。




 ここでホテル方面別に解散する。明日は済南に移動する。ACLの山東対ガンバ大阪戦を観戦する予定である。


(続く)
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