後半、いきなり雨が降り出す。ソウルワールドカップ競技場は観客席の大半が屋根で覆われているため見ている分には問題がないがかなり強く降っているため水煙があがりピッチがよく見えない。 選手の動きが見る見る止まっていく。ベシタクシュは今日は緒戦ということもあり、引分けで充分と考えたのだろうか。パスを出すわけでもなく城南のボールを奪うわけでもなく、失点をしないことだけを考え選手交代をする。一般の考え方としてはこの方法はアリだと思うけれど、相手は韓国のチームである。トルコはワールドカップで韓国のやり方を充分に知っていたはずだろうに。
城南は諦めなかった。徹底的に勝ちに行った。フォワードの数を増やし積極的にペナルティエリアに飛び込む。ソウルワールドカップ競技場のオーロラビジョンはどういうわけか出場選手を全く表示せず、プレー映像を表示しっぱなしで選手構成はわからないのでなんともいえないが、城南は3-4-3を引いているようだ。トップはユンジョンファンだろうか。水煙でさえぎられてよくわからない。
ベシタクシュは必死に守る。・・が、後半もロスタイムに入った頃、ディフェンスが耐え切れずに失点。城南ホームと化したスタジアムが沸く。ついでにスタジアムDJも大声で叫ぶ。・・一般に試合の主管が出場チームでないときはアナウンスは公平にするものであるが・・こういう運営をするからワールドカップがウリナラカップと呼ばれるんだよ。
ここで試合終了。ガックシと肩を落とすベシタクシュ。負けたのは当たり前。いくらヨーロパのチームとはいえ、2軍でそろえたベシタクシュがアジアの強豪である城南のトップチームに勝てるとは思えない。ヨーロッパのチームに結果を出したことはこのカップ戦を開催した意義もあるのかも知れない。
雨脚はますます強くなってくる。私は意を決してダッシュで駅に向かう。地下鉄の駅はスタジアムの前とは言え、傘無しでつっきるのは苦しい。ましてや駅前は大混雑である。結局ずぶぬれになって電車に乗りホテルに到着。カメラが濡れなかったのは幸いであった。 まだ夕飯も食べていない。ホテルのある鐘閣は繁華街で大衆食堂はいくらでもある。私はその1件に入りカルビを注文した。久しぶりの韓国での食事であったが相変わらず焼肉 はうまい。日本の高級焼肉店に入るくらいならソウルの大衆食堂の焼肉のほうがずっとうまい。腹も減っているのでバクバク食べる。一人で焼肉店に入る日本人は珍しいのか店内では注目を浴びる。
そのうちの、若い韓国人が私に声をかける。「日本人か?」「そうだ」「一緒に飲まないか?」「OK」。焼肉は一人で食べてもつまらない。その他何人かの仲間も加わり急遽日韓お食事会となった。「何しに韓国に来た?」「ピースカップを見に」「試合はよかったか」「良かった。城南の攻撃が良かった」「それは良かった。試合は見たかったがチケットが高かったので諦めた。」・・まあそうだろうな。Kリーグの3倍もすれば・・。 彼:「コンフェデレーションズはいい試合をしたじゃないか」 私:「ワールドカップおめでとう」(苦笑)
夜も吹け、午前0時を回ろうとしていたが、彼らと話しているのは楽しかった。Kリーグのこと。Jリーグのこと。Jリーグの韓国人選手のこと。軍隊、政治、宗教、その他。お互い拙い英語ではあったが一生懸命コミニュケーションを取った。彼らは日本人と話すのは初めてだそうだ。まあそうかも知れない。ビールを飲み、チゲを食べ、焼酎を飲んだ。私は酒は弱いほうだが、こういうときは何故か飲める。私はマッコリが飲みたいというと彼はコンビニに走り、買って来てくれた。マッコリ、つまり韓国版ドブロクだが少し酸味がありおいしい。彼らはまだ24歳。徴兵上がりで私よりずっと若い。さすが儒教の国で年上に対する礼儀はキッチリわきまえている。タバコを吸うときは席を外し、外で吸う。軍隊を経験した彼らは同年齢の日本人よりもずっと逞しい。サッカーで韓国に勝てない訳が少し分かるような気がした。
ホテルの門限に間に合わなくなるので私は例をいい、メールアドレスの交換をして部屋に戻った。もう午前2時近いが飲み足りないのでコンビニに出かけ、またマッコリを買って飲んだ。韓国入国初日で疲れているはずであるが、こういうのもいいかも知れぬ。ボトル半分くらい飲んだところで意識が朦朧としてきてそのまま寝込んだ。明日は釜山に行く予定である。
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