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2003.07.15

初日 城南一和 2-1 ベシタクシュ

観戦記

初日 城南一和2-1ベシタクシュ
2日目 1860ミュンヘン 2-4 PSVアイントホーフェン
3日目 ベシタクシュ 2-1 リヨン
最終日 LAギャラクシー 0-0 1860ミュンヘン

ソウル市内は蒸し暑かった。梅雨の中休みということもあり、疲れが増す。ソウルワールドカップ競技場に行く途中、漢江に寄って見る。川の流れが涼を呼び気持ちいい。サッカー観戦なんぞどうでもよくなる。このままここに居ようかとも思ったけれど気を取り直して地下鉄に乗りスタジアムを目指す。梅雨中であることから天気が心配であったが概ね晴れか曇り。少しだけ雨。そういう意味では恵まれた旅行ではあった。  

 5年ぶりに訪れた韓国は激変していた。あの無愛想さが特徴の大韓航空のキャビンアテンダントは気持ち悪いくらい笑みを浮かべて接客し、仁川国際空港とソウル市内を結ぶ高速道路は上下10車線で交通マナーが大きく向上した。割り込む車も無くスムーズに走る。地下鉄の乗換え案内は韓国語、英語、日本語、中国語の4ヶ国語で話され、車内は物売りも物乞いも演説親父もいなくなっていた。

 その代わり物価は概ね値上がりしていた。5年前、400ウォンだった地下鉄は700ウォンに、初乗り1300ウォンだったタクシーは1500ウォンに上昇していた。まあ為替レートは1ウォン=0.1円なので日本円に換算すればまだまだ安い。すべてがスマートでクリーン。私は横浜FCのレプリカを着ている。背中にセキドの文字が入っているので一目で日本人と分かる。ちょっと地図を開くとすぐに近くの人が「Where are yougoing?」と聞いて来る。ワールドカップの影響だろうけれど日本人への親切さは想像以上ではあった。韓国人に日本の印象を聞くと概ね悪い答えが返ってくるが、街中の市民は非常に親日である。この辺の違いが私はよくわからない。  

 ワールドカップに合わせて開業した地下鉄8号線は明らかにサッカー観戦に行くと見られる乗客でごった返していた。その中で目立つのは「For Peace」と書かれた黄色いTシャツの集団。それを見るとああ、やっぱりな。妙に納得してしまう。見た目は普通の老若男女少年少女ではあるのだけれど。その理由は後ほど。 

 ソウル市内から電車で30分程度、ワールドコプキョンギジャン駅でおりると周りは黄色いTシャツ集団だらけとなる。駅の近くには素人ダフ屋が大勢いる。私はその中の一人と交渉し、カテゴリ1の指定席3万ウォンを2万ウォンで話をつけた。チケットは完全に買い手市場でありまだ値切る余地はあったが、一刻も早くスタジアムに入りたかった。 

後で知った話だが相当タダ券がばら撒かれており、もっと早く来れば手に入ったらしい。しかし今となってはしょうがない。

 ピースカップコリア2003。この大会を見る為に私は韓国に来た。世界8カ国のクラブチームを韓国に集めて行うこの大会は優勝賞金200万ドル、準優勝50万ドル、賞金総額1000万ドル。参加国は城南一和(韓国)、PSVアイントホーフェン(オランダ)、1860ミュンヘン(ドイツ)、オリンピックリヨン(フランス)、ベシタクシュJK(トルコ)、カイザーチフス(南アフリカ)、ナシオナル(ブラジル)、ロサンゼルスギャラクシー(アメリカ)。超一流とは言えないまでもそこそこ一流と言っていい。本当はバイヤーレバークーゼンとASローマが参加予定でそれを見るのが目的だったのだが、両チームは開催直前となって参加をキャンセル。まあそれでも世界のクラブチームを見るのは意義があるだろうと私はここまで来たのだ。

 航空券を押さえ、ホテルを予約し、後は出発を待つばかり。楽しみにしていると同時に疑問もわいてくる。
 ①そもそもこの大会、何が目的なのか。
 ②優勝賞金2百万ドル(24億ウォン)、賞金総額1千万ドル(120億ウォン)って高すぎないか?入場料金はメインバックが3万ウォン、ゴール裏が2万ウォンである。収入は・・招待券もばら撒くことから平均入場料金2万ウォン、平均入場者2万人、とすると13試合で52億ウォン。全然足りない。他の収入、例えばテレビ放映権やピッチ看板からも収入はあるだろうが、支出だってスタジアムの使用料や各チームの渡航費滞や滞在費がかかる。横浜国際総合競技場の使用料をまかなうには1万人の入場者数が必要(1階席のみ使用、照明未使用)と考えると有料入場者数2万人程度ではスタジアム使用料を払っておしまい、とも思えるのだが。

 ③チケット代がゴール裏2万ウォン、メイン、バック3万ウォンって高すぎないか?日  本円換算でそれぞれ2千円、3千円だから日本の基準で言えば妥当もしくはやや安い位だが・・Kリーグの試合が全席1万ウォンと考えると2倍もしくは3倍の価格である。上記の理由を考えると値段については仕方がないが。

 ④日本に情報が全く入ってこないのはどういうことだ?1860ミュンヘンなどは自チームのホームページにすら公表していない。

 いろいろ調べていくうちに少しずつ実態が分かってきた。この大会の主催団体は鮮文スポーツ財団。会長は文鮮明。10年ほど前に合同結婚式で散々もめたあの宗教団体の教祖である。もともとスポーツと宗教は非常に相性がよい。高校野球などまさにそうだしサッ
カーだって宗教団体を母体にしているところはいくらでもある。スコットランドのグラスゴーとレンジャースのダービーマッチはカトリックとプロテスタントの代理戦争だ。そういう意味で統一教会がイベントを主催したって別におかしくはないのだが、この大会をインターネットで調べているといたるところで「偉大なるお父様は・・」と紹介されるのでその度に大きくへこんでしまう。
 実態が分かってきて大きく落胆するも、航空券を買ってしまっただけにやむを得ない。純粋にサッカーを楽しみに行くことにする。

 席はバックスタンド2階席中央、良席である。ソウルワールドカップ競技場はサッカー専用で総2階建て6万4千人収容。傾斜もちょうど良くどこからでも見やすい。恐らく6万人規模のスタジアムとしては世界屈指だと思う。布張りの屋根が間接照明に映えて美しい。埼玉スタジアムなど比べるまでもない。横浜国際は・・まあいいや。

 今日はバイクでないので酒はいくらでも飲める。ビール2本、海苔巻き弁当、ポテトチップス、合わせて800ウォン。蒸し暑さが心地よい。いい気分になった頃、開会式が始まった。

 開始1時間前であるがスタジアムは閑散としている。スタジアムの全席に黄色いTシャツ集団が目立つ。鄭夢準会長の挨拶、そして女性にエスコートされて何処かで見たような老人が勢い良く開会を宣誓。ピースカップがはじまった。ピースカップというよりは統一教会カップと言った方が実態にかなっているかも知れない。  色眼鏡で見れば宗教がかった式だが結構それなりには見える。開会イベントは1時間ほど続き観客も増えたころ、スターティングメンバーが発表された。

開始10分前、スターティングメンバー発表。といっても全く聞き取れない韓国語と怪しい発音の英語で誰が誰なんだか全くわからない。何よりもこの手の大会には必須の公式プログラムというのがない。大会開始2週間前に出場チームがキャンセルになったのだから仕方がないともいえるが・・・。

 城南一和で分かるのはキムドフンとサーシャ。ユンジョンファンは出てないらしい。ベシタクシュはイルハンが出ず。怪我をしたらしいが真相は不明。これでゲームが成り立つのかと思っているうちに懐かしいFIFA-ANTHEM2002が流れ、選手入場。

 試合は思っていたよりも内容が内容がよかった。ベシタクシュやPSVと言った欧州中位チーム(チャンピオンズリーグ一次リーグ出場チーム)程度だと賞金の200万ドルと言うのはかなりおおきいのだろう。まあレアルマドリーなどから見れば練習試合1試合分のギャラにもならないが。シーズン前の調整としてはお手ごろの相手かもしれない。

 お互いがフィールドの全般でプレスをかけ、スペースを見つけショートパスを出す。ボールはオフェンスの意のままに動ききちんとシュートで終わる。見て楽しいサッカーの見本とも言うべき内容で、おちゃらけた展開を予想していた私には意外だった。

 先取点は前半3分にベシタクシュが意表をついたロングボールをフォワードが頭で合わせ先制。その2分後に城南がFKで同点と結構見せる。スタンドの観客の7割は城南サポで同点の瞬間はかなり沸いた。もっとも城南も例の団体もカラーは黄色なのでどっちがどっちだか判断がつかない。(注:城南一和の主要株主が統一グループらしい。ということは本当にどっちもどっちということだ)

 いいゲームゆえ、先発メンバーがわからないのが本当に惜しい。ベシタクシュのフォワードは城南のDFの裏を徹底的に狙っている。この手のタイプのフォワードは日本にはいない。FC東京時代のトゥットが近い。しかし城南DFもあわてず対処し、0-0でハーフタイム。

 後半、いきなり雨が降り出す。ソウルワールドカップ競技場は観客席の大半が屋根で覆われているため見ている分には問題がないがかなり強く降っているため水煙があがりピッチがよく見えない。
 選手の動きが見る見る止まっていく。ベシタクシュは今日は緒戦ということもあり、引分けで充分と考えたのだろうか。パスを出すわけでもなく城南のボールを奪うわけでもなく、失点をしないことだけを考え選手交代をする。一般の考え方としてはこの方法はアリだと思うけれど、相手は韓国のチームである。トルコはワールドカップで韓国のやり方を充分に知っていたはずだろうに。

 城南は諦めなかった。徹底的に勝ちに行った。フォワードの数を増やし積極的にペナルティエリアに飛び込む。ソウルワールドカップ競技場のオーロラビジョンはどういうわけか出場選手を全く表示せず、プレー映像を表示しっぱなしで選手構成はわからないのでなんともいえないが、城南は3-4-3を引いているようだ。トップはユンジョンファンだろうか。水煙でさえぎられてよくわからない。

 ベシタクシュは必死に守る。・・が、後半もロスタイムに入った頃、ディフェンスが耐え切れずに失点。城南ホームと化したスタジアムが沸く。ついでにスタジアムDJも大声で叫ぶ。・・一般に試合の主管が出場チームでないときはアナウンスは公平にするものであるが・・こういう運営をするからワールドカップがウリナラカップと呼ばれるんだよ。

 ここで試合終了。ガックシと肩を落とすベシタクシュ。負けたのは当たり前。いくらヨーロパのチームとはいえ、2軍でそろえたベシタクシュがアジアの強豪である城南のトップチームに勝てるとは思えない。ヨーロッパのチームに結果を出したことはこのカップ戦を開催した意義もあるのかも知れない。

 雨脚はますます強くなってくる。私は意を決してダッシュで駅に向かう。地下鉄の駅はスタジアムの前とは言え、傘無しでつっきるのは苦しい。ましてや駅前は大混雑である。結局ずぶぬれになって電車に乗りホテルに到着。カメラが濡れなかったのは幸いであった。 まだ夕飯も食べていない。ホテルのある鐘閣は繁華街で大衆食堂はいくらでもある。私はその1件に入りカルビを注文した。久しぶりの韓国での食事であったが相変わらず焼肉
はうまい。日本の高級焼肉店に入るくらいならソウルの大衆食堂の焼肉のほうがずっとうまい。腹も減っているのでバクバク食べる。一人で焼肉店に入る日本人は珍しいのか店内では注目を浴びる。

 そのうちの、若い韓国人が私に声をかける。「日本人か?」「そうだ」「一緒に飲まないか?」「OK」。焼肉は一人で食べてもつまらない。その他何人かの仲間も加わり急遽日韓お食事会となった。「何しに韓国に来た?」「ピースカップを見に」「試合はよかったか」「良かった。城南の攻撃が良かった」「それは良かった。試合は見たかったがチケットが高かったので諦めた。」・・まあそうだろうな。Kリーグの3倍もすれば・・。
彼:「コンフェデレーションズはいい試合をしたじゃないか」
私:「ワールドカップおめでとう」(苦笑)

 夜も吹け、午前0時を回ろうとしていたが、彼らと話しているのは楽しかった。Kリーグのこと。Jリーグのこと。Jリーグの韓国人選手のこと。軍隊、政治、宗教、その他。お互い拙い英語ではあったが一生懸命コミニュケーションを取った。彼らは日本人と話すのは初めてだそうだ。まあそうかも知れない。ビールを飲み、チゲを食べ、焼酎を飲んだ。私は酒は弱いほうだが、こういうときは何故か飲める。私はマッコリが飲みたいというと彼はコンビニに走り、買って来てくれた。マッコリ、つまり韓国版ドブロクだが少し酸味がありおいしい。彼らはまだ24歳。徴兵上がりで私よりずっと若い。さすが儒教の国で年上に対する礼儀はキッチリわきまえている。タバコを吸うときは席を外し、外で吸う。軍隊を経験した彼らは同年齢の日本人よりもずっと逞しい。サッカーで韓国に勝てない訳が少し分かるような気がした。

 ホテルの門限に間に合わなくなるので私は例をいい、メールアドレスの交換をして部屋に戻った。もう午前2時近いが飲み足りないのでコンビニに出かけ、またマッコリを買って飲んだ。韓国入国初日で疲れているはずであるが、こういうのもいいかも知れぬ。ボトル半分くらい飲んだところで意識が朦朧としてきてそのまま寝込んだ。明日は釜山に行く予定である。

2日目へ続く→
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