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初日:RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(前編)

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初日
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(前編)
RW・エッセン - F・デュッセルドルフ(後編)

2日目
バイエルン - レバークーゼン(前編)
バイエルン - レバークーゼン(後編)

3日目日
リエージュ - ラ・ルヴィエール

4日目日
マーストリヒト-エクセルシオール

最終日
帰国へ

 ドイツの地域リーグを見たかった。すぐ隣にチャンピオンズリーグに出るようなメジャーチームがありながら、あえてそこには中指を突き上げ、自らはおんぼろスタジアムで声援を飛ばす。花火爆竹なんでもあり。一般社会ではとても言ってはいけないような汚い言葉を吐きつける、そんな試合が見たかった。ワールドカップを控えたドイツではスタジアムの改装が進み、快適で安全を売り物にするチームが増えてきた。それはそれでひとつの方向性として正しいと思うけれど、サッカーの原点であるテラス(立見席のこと-ドイツ語ではステープラッツ)から熱い応援が響く光景が見られなくなるのは非常に寂しい。鉄火場のイメージを残すスタジアムで試合を見たい。その気持ちだけでドイツに行った。

 3部リーグにもかかわらずスタジアムを満員にするようなチームがドイツには2つある。ひとつはハンブルグの歓楽街(というより娼婦街)レイバー・パーンに本拠を置くザンクト・パウリ。もうひとつはデュッセルドルフ近郊にある鉄鋼と炭鉱の町エッセンに本拠を置くRW・エッセン。いずれもスタジアムはメインスタンド以外は立ち見、かつ観客は常に満員というファンタスティックなクラブである。

 日程を見比べると2月3日、エッセンのホームで試合があるのがわかった。対戦相手はお隣の大都市に本拠のあるフォルトナ・デュッセルドルフである。ラインダービーであるから試合は燃えるだろう。ひょっとしたら本当に燃えるかも知れない。この試合を主軸にして日程を組み、ドイツに向かった。

 日本航空でアムステルダム入りし、翌日エッセンに向かう。試合開始時刻は午後7時30分で、アムステルダムやロッテルダムのスタジアムをゆっくり見学しても良かったのだが、この地域リーグの試合は満席も予想されるため早々とスタジアムに向かう。ケルンのホテルに投宿し、エッセンの本拠地ゲオルグ・メルフェス・スタディオンに向かう。エッセン駅に近づくにつれ、エッセンサポーターが電車に乗り込んでくる。まだ午後3時すぎなのに、こいつら会社や学校はどうしたのかと思うが、大体想像がついているので黙っておく。。

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 エッセン中央駅はエッセンサポで占拠されていた。3部リーグとは言え毎試合1万5千人以上入るのでなかなかにぎやかだ。「シャイセーシャイセーデュッセルドー♪」とあちこちで歓声があがる。シャイセとは糞ったれの意。日常生活では禁句、サッカーでは挨拶代わりの常套句である。これを駅前広場や電車の中で堂々と歌うのだから頼もしい。横浜FCサポーターが横浜駅ダイヤモンド地下街で「ファッキン♪マリノス」を歌う日は来るだろうかと少し考えてしまう。

 早めの食事を取ってバスでスタジアムに向かう。バスはエッセンサポで満員で例によって騒々しい。ただ、子供の姿が目立つ。長い歴史を持っているということは観客は常に世代交代を繰り返しているということだ。どのチームもその辺は充分に意識をしていて、チームグッズもキッズユニフォームは当然のこと、ナイトキャップからベッドカバー、パジャマにいたるまで子供グッズはなんでもそろえている。こうやって親とクラブは共同で子供を洗脳していく。こういう取り組みはJリーグのどのチームよりも進んでいると思う。ただ、子供にしてみたら残酷なことだ。あと10キロ東で生まれていれば、今頃はチャンピオンズリーグ出場チームであるシャルケサポになれたのに。まあそれも運命。それもまたよし。

 エッセンはルール工業地帯の中核都市である。日本で言えば京浜工業地帯のようなものであるが、緑が比較にならないほど多い。駅を出て約20分。ビルの明かりが段々少なくなった頃、バスは停車し、サポーターたちは皆降りた。ここがどこだかわからなかったが私も降りる。  

 前方に4基の照明塔が煌々と点いている。こういう風景は懐かしく嬉しい。サッカーを見ない人には当たり前の光景だろうと思うかもしれないが、最近のスタジアムは照明は屋根に取り付けられていて照明塔は段々少なくなってきている。屋根に照明をつけた方が安全にメンテできるし影も少なくなるからであるが、サッカー好きからみると、遠くに見える照明塔はその土地のランドマークでありスタジアムの中に入ること自体を期待させてくれる。サッカーを見るんだという気持ちにさせてくれる。

エッセンのホーム、「ゲオルグ・メルフェス・スタディオン」は相当年代モノのスタジアムで、古色蒼然と言っていいものだった。年代モノだけあって、栄光の歴史があり、ブンデスリーガ創設期にエッセンはここでタイトルも取っている(但しカップ戦)。2005年に日本で公開された映画、「ベルンの奇蹟」はこのエッセンが舞台で、この映画に出てくる主人公、マチアスはエッセンのサポーター。ドイツ代表に選出されたラーンもエッセンの選手である。エッセンだけではない。今日の対戦相手、フォルトナ・デュッセルドルフからも代表を選出し、その選手達でワールドカップの優勝を勝ち取った。今はしがない3部リーグであるけれど、50年前はこのスタジアムで1部リーグを戦ったのだ。

 とはいいつつも老朽化は避けられない。コンクリート建築物の寿命は50年。このスタジアムも新スタジアムに改築される。既に西側ゴール裏は撤去されシートがかけられている。販売されるのは東側ゴール裏、メイン・バックスタンドのみである。

 当然のことながら私は座りたかった。こういう試合を見たかったとはいえ、別にサポーターではないので座ってマッタリと観戦したかった。しかし、ジッツプラッツ(椅子席)はメインスタンドしかなく、こういう席は大抵年間チケットホルダーに占められているので確保は難しい。ダメモトでチケットボックスに聞いてみたが、返ってきた答えは「アウスヴェルカウフト」。つまり完売。メインスタンドだけではない。バックスタンドも完売で残っているのはゴール裏だけだった。仕方がないのでそのゴール裏中央を7ユーロ(約1000円)で購入する。時間はまだあるのでソーセージとビールを買ってパクついてみる。やはり本場でおいしい。みんな思い思いの場所でソーセージを食べている。サポーターは家族連れが多いようだった。こんな鉄火場のようなスタジアムで家族連れというのは危ないような気もするが、そんなことを気にする必要がないだけの歴史があるのだろう。私は時間を見計らってスタジアムに入った。
                 

 (後編)に続く
 
 
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