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4日目:セルタ・ビーゴ対アヤックス

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11月11日 
成田-モスクワ-マドリード

11月12日
レガネス 対 ヌマンシア

11月13日
ブラガ 対 ボアビスタ

11月14日
セルタ・ビーゴ 対 アヤックス

11月15日
ビーゴからアベイロへ

11月16日
ベンフィカ 対 モルデ

11月17日
ジルビセンテ 対
ベネレンセス

11月18日
スーペルリーガ2部

11月19日 第一試合
ヘタフェ 対 レバンテ

11月19日第二試合
アトレティコ・マドリード 対
 ビジャレアル
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 ブラガからのバスは予定より大幅に遅れてバルセロスの駅に着いた。これからビーゴに向かうが、8時48分発の列車にはとっくに出発してしまった。もうスペインへの直通列車は無いので各駅停車でスペイン国境の町バレンサに出る。そしてタクシーで国境を越えてトゥーイへ、そこからバスでビーゴに向かう。本当は午前中にビーゴについて世界遺産の町、コンポステラを見物する予定だったのだが、世の中なかなかうまくいかない。仕方がないのでサッカー観戦に専念する。 午後3時、ビーゴバスターミナル着。そのままタクシーでビーゴ駅に向かう。明日は又ポルトガルに戻るので駅前のホテルに泊まる必要がある。駅前に着くとホテル街を見つけ、そのままチェックインした。


 試合開始までまだ時間はあるので港に出て海老のパエリヤやオクトブス(蛸)料理を食べる。何か・・この旅行で始めてマトモなものを食べたような気がする。いつもはパンとか屋台ものとかそんなのばっかりだったから。ここからスタジアムまでは約3キロ。散歩がてら歩くのはちょうどいい距離である。


 海岸から市街に入り、ビーゴ市中心部の交差点、プラザ・アメリカに着いた辺りからアヤックスサポーターの数が多くなる。ビーゴサポーターはほとんど見ない。折角のチャンピオンズリーグなのにもったいないと思うが、まだ6時前だ。平日のこの時間にカタギの地元サポがスタジアムに来るはずがない。しかしスタジアム中が白赤のユニフォームでゴッタがえしているのはどういうことだろうか。世界中のサポーターで一番アウェイ遠征率が高いのがリバプールとアヤックスのサポだというのを聞いたことがあるが、なるほど頷ける。アヤックスはこの試合に勝てばチャンピオンズリーグの一次リーグ勝ちぬけがほぼ決まる。サポも気合の入れ方が違う。


 プラザ・アメリカから少し歩くと本日の観戦場所、エスタディオ・パライードスに着く。水色が映える中規模のスタジアムで、仙台スタジアムより少し大きいかと言ったところ。取り急ぎチケットを買う。前回のセルタ-ミラン戦をテレビで見た限りでは惨ざんたる客の入りだったので大丈夫だろうと踏んでいたが、チケットボックスでは予想外の出来事が起きた。



 価格が滅茶苦茶に高い。バックスタンド80ユーロ。日本円にして約1万円。トヨタカップの定価1万5千円に比べればまだマシだがそれでも高い。そりゃあスタンドがガラガラのわけだ。 実を言うと私はこの試合、チケットが完売したときにダフ屋と交渉する際の上限価格を80ユーロと決めていた。それが定価で80ユーロ。ゴール裏はもう少し安いがそれでも高い。



 私はイベリア半島まで来た以上、チケットの価格が40ユーロだろうと80ユーロだろうと買うことは困難ではないが、セルタを応援している一般のサポーターはどういう気持ちなのだろうと思う。本来、労働者階級の大人が週末に愉しむためのフットボールは完全に金持ちの社交場になってしまった。世界戦なんかいらない、リーグ戦で充分と言うビーゴ市民の恨みが聞こえてくる。


 私はスタジアムのオフィシャルショップでグッスを買い込み、近くのパブで2時間ほど時間を潰した。アヤックスサポーターはどんどん増えてくる。セルタサポも増えてきた。一食触発の状態だが警官隊がスタジアム中を取り囲んでいるため暴動は起きない。上空はヘリコプターがブンブンとびまわり非常にうるさい。


 7時30分、入場開始。指定された席はバックスタンド中央で悪くない。バライードスはバックスタンド側にベンチがあり私はその後ろである。バックスタンド愛好者にとって選手や監督を間近に見るのは滅多にないことなので少し興奮する。観客も次第に増えてきて開始直前にはバックスタンドはほぼ満席になった。前回のミラン戦よりは客の入りがいい。



 アヤックスの選手が練習のためピッチに入る。凄まじいブーイングが鳴り響く。ブンデスリーガもそうだがヨーロッパのスタジアムにおけるブーイングはJリーグの比ではない。憎悪とか殺意とか、そこまではいかなくても「敵意」というのはハッキリと見て取れる。ブーイングの適切さで言えば日本では浦和が一番だと思うが、それでも女子供の範囲だと思う。国立における日本代表などホームの雰囲気は弱すぎるのではないか。


 そしてセルタの入場。スタジアムは大歓声に包まれる。みんな水色の小旗を振る。私はもらっていないのでポカンとしていると隣のお爺ちゃんが、ちょっと待っていろと係員を呼び持ってこさせる。みんなで応援しよう、みんなで勝たせよう、そんなムードだった。セルタの選手達の表情は明るい。リーガエスパニョーラは連敗続きで隣のデポルティボ・ラコルーニャに大きく水を空けられているが、選手もサポーターもまだまだ元気だ。


 エスタディオ・バライードスはサッカー専用競技場ではあるが、ピッチの周囲に小さなダート周回路があるので、トラックのない陸上競技場のような形をしている。そのため、ゴール裏からは少し距離がある。そのスペースに警官隊がずらっと並ぶ。


 選手紹介が終わり、選手入場。両方ともファースト・ユニフォーム。セルタサポには失礼だが私にとってアヤックスは特別なチームである。ベッケンバウアーとヨハンクライフにあこがれて小中時代を過ごした私はアヤックスというのは雑誌の世界であった。もうクライフはいないけれどあのアヤックスが私の目の前でプレーをしている。夢の実現と言ってもいいかもしれない。


 チャンピオンズリーグのテーマが鳴り響き、試合開始。爆竹の音が一斉に鳴り響く。強烈なプレッシャーをかけるのはセルタ。これに対してアヤックスは落ち着いて対処する。ボールを支配しているのはセルタだが、今のサッカーはボールポゼッションに意味はない。こういう試合はカウンターに走りやすい。しかしセルタは落ち着いていた。モストヴォイが少し下がり目の位置にいるためアヤックスは得点ができない。 試合開始から20分が過ぎようとしているが、見ていて飽きない。やはりチャンピオンズリーグだけあってレベルが昨日、一昨日の試合とは比較にならない。ショートパスの連続でボールが止まらない。


 いつも見ている試合とどう違うのか考えてみる。例えばワン・ツー・パスというのがある。敵と対峙している選手が味方にパスを出し敵を抜く。味方はワンタッチで自分にボールを戻す。サッカーの技としては基本中の基本だ。それが全く出来ていないのが横浜FCであり、だからこそ見ていてイライラするのであるが。この試合においては90分、ワン・ツーパスの連続だった、と言えば分かってもらえるかも知れない。





 ボールを扱う技術、例えば飛んできたボールを胸でトラップしてピッチに落とす。これだけなら小野信義もデルピエロも大して違わないと思う。しかし自分がボールをもらう前に次の受け手がフリースペースに走る、そしてワンタッチでそのフリースペースへボールを出す。アイコンタクトでパス回しをしているのだろう。創造性とコミニュケーション能力の融合という点で見れば絶望的と言っていいほどのレベルの差が存在する。


 普段CS放送でヨーロッパのゲームを見ている人にとって、それは当たり前だろうと思うかも知れない。しかしそれは違う。J1、J2、JFL、地域リーグと欧州のマイナーリーグにおける同カテゴリはレベル的に大きな違いはない。しかし日常的にマイナーな試合を見ている人間が、目の前にあるピッチでチャンピオンズリーグを見せられれば歴然とした差を感じざるを得ない。努力すれば夢はかなう、という歌や座右の銘はたくさんあるけれど、どんなに努力してもこのピッチに立つことは絶対にできない、という現実は実際に見なければわからないだろう。


 試合はセルタのカウンターが効きだしてくる。セルタオフェンスが3人、アヤックスディフェンスが4人。都合7人が狭いプレーエリアでボールを奪い合う。混戦になったところを逆サイドにボールが渡りアヤックスペナルティエリアに攻め込む。これをディフェンスが交錯しセルタがPKを得る。これをセルタは決める。この先制点は大きかった。


 セルタは攻める。ミロセビッチの1トップだが、モストボイが中盤の選手を積極的に使うので攻撃時は3トップのような形になる。セルタオフェンスが左右に走る。アヤックスディフェンスがそれぞれマークにつく。そこに一瞬スペースが空く。そのスペースにモストボイがセンタリングを上げ、ミロセビッチがダイレクトでゴール右上にボールを突き刺す!美しい!


 美しい。本当に美しい。少なくともこのレベルのサッカーができるチームは日本には存在しない。私は羨ましいと思うと同時に悔しさがこみ上げ、複雑な気持ちになった。アヤックス相手に2-0。セルタの完璧な試合運びである。エスタディオ・パライードスの観客はほぼ半狂乱状態でゴール裏は爆竹を鳴らし警官隊ともみ合いになる。


 とは言えアヤックスだって悪くはない。一流のチーム対超一流のチームの戦いで、それはどちらに試合が傾いてもおかしくはなかった。しかし、前節、アムステルダムの試合で見せたファンデルファートのゲームメイクは今回はセルタに押さえ込まれていて彼は存在感がない。



 それでも前半が終わる直前、ソンクが一人でセルタディフェンスを突破し、1点を返す。ソンクはアヤックスに移ってからもレギュラーを維持している。去年はゲンクにいたのだけれど・・鈴木隆行が彼からポジションを奪うのはやっぱり無謀だよなあと思う。 後半もセルタは攻める。負けているアヤックスのほうが運動量が落ちてくるのはどうしたことか。その隙にセルタは追加点をいれ、試合を決定付ける。試合終了まであと20分。


 81分、今まで精彩を欠いていたファンデルファートが根性で1点を返すとスタジアムは一気に静まり返る。あと1点差。みんな時計を見る。サッカーで一番面白い時間が始まった。1分、また1分と時間は過ぎる。セルタは耐える時間帯が続く。両チームとも選手交代を頻繁に行う。セルタ11番、ゴスタホロペスがピッチを退く。スタジアムからは一斉にブーイングが起こる。点の取れない背番号11にはホームチームといえどもサポは容赦しない。城や西澤は苦労しただろうなと思う。


 ロスタイム3分。モストボイOUT。打って変わって大歓声が巻き上がる。リーグ戦の連敗の責任を一身に背負い続けたこの老兵は両手を大きく上げ、退場した。 試合終了。3-2セルタの勝ち。これでチャンピオンズリーグH組においてセルタは3位に上がり、決勝トーナメント進出の望みがでてきた。逆にアヤックスは一次リーグ突破のはずが、混戦の中に巻き込まれた。 スペインのスタジアムは引きが早い。スタジアムに残っているのは憔悴したアヤックスサポーターだけである。私も外に出た。午後11時を回っているが、スタジアムの周囲はごった返していた。私はマフラーをもう1本買い、スタジアムを離れた。


 夜は遅いが腹は減っている。近くのバーに入り、サンドイッチとビールを頼む。周りはセルタサポーターだらけである。みんな気分がいいので私のために場所を作ってくれた。 対面の青年が私に尋ねる。「どこから来たのか?そうか、日本か。横浜?横浜というとマリノスだな。俺もマリノスなんだぜ。(注:マリノスはスペイン語。船乗りの意)」 私もつたない英語で答える。「今日はいい試合だった」「そう本当にいい試合だった」「モストボイが良かったね」「ウン、でも彼はもう年だから」「ワールドカップで彼を見たかったよ。でも彼がいなかったから日本は勝てた」「それはあるかもね」「スペインは・・」「・・・・・・・・・・」「ミランに勝ったらチャンスはあるかもね」「勝つよ当然」「サン・シーロで勝つのは難しいのでは」「問題ないね、行くつもりさ」(注:お互いが相当酷い英語のため、本人はこう会話したつもりである)





 バー(スペイン語ではバル)は楽しい。いつしか日付は変わり、少し空いてくる。私はみんなで記念写真を撮り、メールアドレスを交換した。彼は私をホテルまで送ってくれると言う。ありがたく彼の好意に甘んじる。 彼の車はプラザ・アメリカの近くに置いてあると言う。少し離れているが気にしない。セルタサポーターはまだ多い。一人がエルガーの威風堂々を歌う。それにつられて周りの人みんなが歌う。「オーオー・・オオオオッオッオッオー、オオオオーオオー、オオオオオ・・・」夜中なので近所の住民はさぞかし迷惑だっただろう。でも今夜は許してもらってもいいかもしれない。今日はセルタ史上初のチャンピオンズリーグ初勝利なのだから。


 ほどなくホテルに着く。彼にはお礼を言って中に入る。明日はポルトガルに戻り、ユーロ選手権のスタジアムめぐりをしようと思う。もう少しビーゴにいたかったが、スタジアム好きとしてはやはり見に行きたい。ビーゴ発8時15分の国際列車でポルトに戻る予定である。

(翌日に続く→)

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