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6日目 ベンフィカ 対 モルデ

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11月11日 
成田-モスクワ-マドリード

11月12日
レガネス 対 ヌマンシア

11月13日
ブラガ 対 ボアビスタ

11月14日
セルタ・ビーゴ 対 アヤックス

11月15日
ビーゴからアベイロへ

11月16日
ベンフィカ 対 モルデ

11月17日
ジルビセンテ 対
ベネレンセス

11月18日
スーペルリーガ2部

11月19日 第一試合
ヘタフェ 対 レバンテ

11月19日第二試合
アトレティコ・マドリード 対
 ビジャレアル
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 昨日はサッカー観戦は休み。コインブラやアベイロなどユーロ2004が行われるスタジアムを見て回った。どのスタジアムも原色をちりばめた明るい施設で、こういう中でサッカーを見たら楽しいだろうなあと思う。スタジアムの構造自体は世界中の新スタジアムの標準といえるもので目新しさはないけれど、哀愁の国のイメージを払拭させたいというポルトガルサッカー協会の熱意は感じ取れた。日本でも沖縄や宮崎のあたりならこういうスタジアムが似合いそうだ。

 ポルトガル中部の町、コインブラで一休みした私は午後のバスでリスボンに向かう。高速バスなので非常に快適。リスボンはポルトガル入国の際に通過しただけなので事実上初めての土地である。さすがに首都でひなびた感じは全く無い。ユーロ2004に備えてあちこちで工事しておりかなり騒がしい。

 バスターミナル到着後、ホテル街のあるエドワルド7世公園に向かい、シティホテルを見つけてチェックイン。ちゃんとエアコン、バスタブ、テレビ付きで料金は40ユーロ。非常に清潔なホテルでしかも安い。ロンドンでこのクラスのホテルに泊まろうものなら倍では効かないだろう。

 試合も気になるがまだ午後5時である。少し落ち着いてレストランを探して夕食をとる。日本に帰ると周りの人から「どうやって食事とか注文するのですか?」と聞かれるが、注文の仕方は非常に簡単である。「地球の歩き方ポルトガル編」の巻頭のほうに「ポルトガル料理」というコーナーがあり、そこにポルトガルレストランにある代表的な料理が写真入りで掲載されている。その一覧をレストランのボーイに見せ、出せる料理を指差してもらう。そして気に入ったものを注文すればよいわけだ。このやり方は他の国でも同じ。そこまで言うと大抵の人は呆れるか軽蔑する。


 「恥ずかしくないんですか?」
 「それだから日本人は・・と言われるんですよ」
 「もっと自分で調べたり料理人と会話したりすればそのお店のオススメ料理があるかも
  知れないじゃあないですか」 などなど。


 私はサッカーを見にきたのであって料理を食べ来たわけではない。写真を見せて会話をすることが恥ずかしいことだとも思わない。英語がほとんど通じない状況で自分の好きなものを注文するとしたら「肉」または「魚」としか言えない。だったら写真を見せて注文したほうが双方のためだと思う。


 そのレストランで私が注文したのは下記の通り。
 ・ クレメ・デ・マリシュコ(魚介類のクリームスープ。少し癖があるがなかなか)
 ・ サラーダ・デ・ポルヴォ(タコのサラダ。さすが港町リスボン。うまい)
 ・ ビフィニョス・デ・ペルー(七面鳥のステーキ。これはどこでもある)
 ・ モロトッフ(カラメルのスポンジケーキ)
 ・ ヴィーニョ・ヴェルデ(白ワイン-グラス)

これで13ユーロ(約1600円)。大体2時間弱くらいかけて食べる。結構ウマイ。だけどそれぞれにクセがあるので日本で出したら絶対に売れないだろうなあ。売れるようならとっくに売っているはずだし。 レストランではトルコで開催されているUEFAカップ2回戦、ゲンチレルビレッジ対スポルティング・リスボンの試合をテレビで放送している。トルコはポルトガルより2時間進んでいるので、先に試合が見れるというわけ。

 適当なころあいを見計らって外に出る。今日の試合会場SLベンフィカのホーム、エスタディオ・ルス2はここから地下鉄で15分程度のところにある。リスボンではこのベンフィカとスポルティングの二つのチームがあり、これとFCポルトを加えた3チームが3強と呼ばれてリーグ戦を戦っている。そのためだかどうか知らないが、両チームが独自のスタジアムを持っている。今回のユーロ2004ではリスボンの二つのスタジアムを新築してしまった。日本でこんなことをやれば避難轟々の嵐になるだろうが、ポルトガルではサッカーというのは国民生活における最重要文化に等しいので2つ作っても許されてしま
う。

 地下鉄コレジオ・ミリタル・ルス駅から地上に出ると、目の前に新築されたばかりのエスタディオ・ルスが現れる。白を基調に赤い屋根をあしらったいかにも現代風のスタジアムで、私としては収容人数12万人を誇った旧ルススタジアムのほうが好きだったのだが、作ってしまった以上仕方が無い。この新スタジアムは完成後、今日が3試合目である。多くのベンフィカサポーターはまだこのスタジアムで試合を見ていない。ちょっとした優越感がある。


 当日券はおそらくあるであろう、との予想は立てるもスタジアムに着くと、とんでもなく多い人が待ち行列を作っている。およそ500人くらい。これ、全部当日券を買いに来た人たちなのか・・。ポルトガルは、というよりヨーロッパはチケットぴあのようなオンライン発券システムはない。もしポルトガル人が札幌にきて、適当なコンビニからアビスパ福岡のチケットを発券するのを見たら腰を抜かすかもしれない。

 これを並ぶのか・・げんなりする。そこは良くしたもので、ちゃんと「ダフ屋」が売りに来る。「チケットあるよ、バックスタンドツェントラム、25ユーロ」 私はそのチケットを見せてもらい、前後に並んでいた人に本物かどうかきいてみた。確かにバックスタンド中央の席とのこと。25ユーロは安いので買う。額面価格は19ユーロ。確実に買える当日券をダフ屋から買うのもどうかしていると思うが・・・一昨日のチャンピオンズリーグは定価80ユーロだった。今日の試合が同じ席で定価19ユーロ。それをダフ屋から25ユーロで買うというのは高いのか安いのかもう私には判断できない。


 試合開始まであと2時間もあるがスタジアムの中に入る。真新しいスタジアムなのでどうやって入ったらいいのか当のベンフィカサポーターもよく分かっていないらしく、あちこちで警官に聞きまくっている。スタジアムと壁からはリノリウムのような匂いがする。この中で寝泊りしたら3日でアレルギーになるんじゃないかと思う。 真新しいピッチは当然のごとくキレイ。観客席は上下2層でピッチ四方をカマボコ型のスタンドが囲んでいる。カシマスタジアムを二周りほど大型にしたようなものだ。



 ダフ屋の言うとおり私の席は確かにバックスタンド中央にあった。しかしそこは上層スタンドの一番盛り上がった部分のさらに最上部にあり、そこから見るピッチは丹沢から見る秦野の町並みのように遠い。エスタディオ・ルスは芝の風通しを良くするため、座席最上段と屋根の間に空間がある。そこを大西洋からの海風が流れ込んできてかなり冷たい。 幸い満席にはならないようだから、試合が始まったら空いている席に移動することにする。 選手がウォーミングアップを始める。ポルトガルで代表的な選手と言えばフィーゴとルイコスタであろうか。それ以外となるとガクンと知名度は落ちる。しかしさすがはポルトガル3大クラブの一つベンフィカで、ヌーノ・ゴメスは私でも知っているし、他にもシモンやプティ、ミゲル等、代表クラスをたくさんそろえている。


 試合開始が迫ってもあまり客は増えない。バックスタンド中央はほぼ満席となったが、全体的に空席が目立ったままキックオフ。恐らく4万以上は入っているのだろうが、スタジアムは6万2千人収容なのでどうしてもこうなる。哀愁の国とはいえさすがはトップ3の一角。シモンとヌーノゴメスの二人だけでゲームを完全に支配していまう。もっと実力が拮抗していれば面白いと思うのだがFKモルデにベンフィカから点を取る能力はない。前半11分にヌーノ・ゴメスが先制点を入れると展開は特に見るべきものはなり眠くなってくる。実力差がある試合と言うのはえてしてこういうものだ。





 それにしてもヌーノ・ゴメスはいい男だ。細身・華奢にストレートの長い髪。あの体格でポルトガル代表のレギュラーを取るのだからサッカーは体格がすべてではないという証明にもなる。ベンフィカ以外ので見ればヌーノゴメスだけではなく、ジョアン・ピント、アンドレ・クルシュなどポルトガルのサッカー選手は美しさを伴っている。確かにお世辞にもスペクタルとはいえないサッカーではあるが。


 試合は淡々と進み、3-1でベンフィカの勝ちで終了した。モルデの1点はベンフィカの緊張感の抜けたディフェンスラインをモルデが強引に突破したもので、ベンフィカにとっては目覚まし程度のものでしかなかったと思う。ベンフィカサポーターもサッカーを見る目は越えていて、ひとつひとつのプレーに対する拍手とブーイングの切り分けはきちんとメリハリをつけている。自チームの選手交代を見てもわかる。活躍した選手に対する大歓声と、なにもできずにスタジアムを後にする選手の罵声は客観的に見ている者にとってさえ身につまされるものがある。


 例によって試合が終わると一斉に引き上げる。エスタディオ・ルスへの交通手段は目の前の地下鉄1本なので帰る人で大渋滞となる。確かにこういう状況ならスリが暗躍していてもおかしくない。私はみんなが帰る方向とは逆に進み、少し離れたところからスタジアムを見た。完成したばかりのスタジアムはライトアップで闇夜に浮き上がる。周りはどこも工事中である。スタジアムは完成したけれど周囲のインフラがまだ整っていない。来年の選手権決勝に間に合わせるよう24時間体勢で工事をしていることが伺える。ポルトガルは納期を守るという概念がやや欠けるのでこうなってしまうのであろうが、まあ来年が楽しみである。


 明日は再度ポルトガル北部に戻り、ポルトガル国内リーグ1部、ジル・ビセンテの試合を見る予定である。

(翌日に続く→)


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