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2010年1月16日(土)

3日目:セリエBの世界(後編)

観戦記

初日
ボンジョルノ!イタリア
ローマの夜
2日目
フィレンツェへ
フィレンツェ探訪
3日目
セリエBの世界
(前編)
セリエBの世界
(後編)
4日目
サンシーロへ
ロナウジーニョ!ロナウジーニョ!ロナウジーニョ!
5,6日目
チャオ!イタリア

(前回からの続き)

 スタジアムは目の前にあるが、そこに通じる道はセキュリティが通せんぼをしている。警備をしているポリスは私に「どっち側で応援するんだ?モデナかパドバか?」と聞く。「モデナ側」と答えると駐車場に回ってスタジアムに入れという。見るとエライ遠回りでうんざりするがおとなしく従う。後で知った話だが、パドバ側と答えると護送されてケージ(アウェイ側待機所)に放り込まれ、すぐには入場できなかったらしい。海外観戦はよほどの理由がない限り、ホーム側で観戦するのがサッカーの基本である。


 モデナのスタジアムは移転したようで、私が確認した地図は陸上競技場だったのだが、現在はメインスタンドとチケット売り場のみ残されている。チケット売り場には酒臭いオッサン達が群がって並んでいて世間話をしている。私もその列に並ぶ。みんな私を異邦人のような目で見るが、こういう風景はもう慣れたので気にしない。


 席は結構細かくカテゴリー分けされていて、10ユーロから50ユーロまでいろいろある。セリエBの試合に7000円近くも取るとはどういう神経かと思うが、ヨーロッパは階級社会なので20ユーロも50ユーロも同じようなものと考えている層はいるのかもしれない。違う階級の人たちと一緒に観戦したくないというのはあるだろう。


 私はバックスタンド一番端の席を買った。25ユーロ(約3500円)。現地の物価換算で言うと日本のJ2とほぼ同じ。買う際、窓口嬢は私にIDカードかドライビングライセンスの提示を求めた。そんなものは持っていないのでパスポートを差し出す。彼女は窓口の奧に引っ込み、コピーを取っている。そこまでする理由がよくわからない。差し出されたチケットを見ると私の名前が書かれている。そういうシステムになっているようだ。それをもってスタジアムの入場口に行くと、セキュリティがチケットとIDカードの提示を求める。私がパスポートを見せるとじっくりと見比べ、名前が一致していることを確認すると通してくれた。その後、荷物チェックを行い、回転扉の前に出た。チケットにバーコードが印字されていて、そのバーコードをスキャナーに当てると緑色のランプが光り、回転扉が回り中に入ることが出来た。ハイテクというほどのものではないが、結構キッチリしている。




 試合開始まで1時間を切っているが、スタジアムは結構ガラガラで、座りたい放題だった。私の席はバックスタンドの一番アウェイ側なのでなおのこと少ない。ただ、ゴール裏はコアサポーターが結構固まっていて、臨戦態勢が整っている。警官がドヤドヤと入ってくる。2部の試合にしては物々しい。観客が少ないだけに結構目立つ。


 上空にはヘリが舞っている。最初は高々度で旋回したのだが、だんだん低空で舞うようになる。「POLITIA(警察)」のペイントがされているので航空警察隊のヘリなんだろう。旋回するとき、後ろの座席からカメラが見えた。正直な話、そこまでするほどのことかとも思う。この試合、日本で言うならば横浜FC対愛媛FCのようなものだろう。三ツ沢に警官が大挙襲来、ヘリ低空旋回中、なんてことになったらかなり異様になるのではないか。最初は様子を見ているだけかと思っていたが、20分以上も旋回している。結構しつこい。



 いい加減、五月蠅い!



 ひょっとして、今日の試合の入場料収入よりもあのヘリの燃料代の方が高くついているんじゃないか?


 ただ、その五月蠅さがいい意味での緊張感を出している。試合開始時刻が近づくと選手が出て、スタジアムDJが盛り上げ、サポがコールして出迎える。相手にはブーイングを飛ばす。サッカーの雰囲気が出てきた。


 その瞬間、シンガポールで感じた「違和感」や「イライラ感」がなんだったのかわかった。簡単な話だった。シンガポールにはサッカーの雰囲気がなかったんだと。今日の試合は絶対に勝つ、とか勝たせるとか、相手を潰すとか、そういう空気があそこにはなかった。別にチアガールやチアボーイの応援がダメと言っているわけではないが、完全に地元ローカルに徹した試合をよその国の人間が見に行って面白いかと感じるかは別の話としてあると思う。


 試合が始まった。セリエBの中でも中位チーム対中下位チームの試合なので、程度は今ひとつと言ったところか。結構あたりながらやっているけれど、技術的にそんなに上手でもなく、意表を突いたプレーをするわけでもない。下位チームのパドバが4人そろったラインディフェンスをしいてオーバーラップをすることないのでモデナは仕掛けが見つからない。攻めては返される、の連続になっている。


 試合の途中途中に他会場の途中経過が表示される。そのたびにゴール裏が「オオ!!」と言う。私はセリエBのスタッツを全く知らないので、どういう状況になっているのかよくわからなかったが、勝ち点で言うとモデナはセリエAへの昇格もセリエC1への降格もどちらもあり得る順位なので、気になるのだろう。


 どうでもいいが、点が入らない。チャンスメークに乏しい。シンガポールの試合もそう感じたのだけれど、ペナルティエリアまでボールを運ぶ技術というのはJリーグは世界屈指ではないかと思う。一本調子という批判はあるにせよ、展開がスピーディでチャンスを多く作る試合は見ていて楽しい。「ヨーロッパの試合を見てしまうとJリーグなんて・・・」という人たちにこの試合を見せてやりたいと思う。


 試合開始15分くらいすると突然アウェイゴール裏に人がなだれ込んでいた。イタリアサッカーの試合を書いた本に、「狂熱のシーズン」というルポタージュものがあって、それを読むとアウェイ客として入るには警察といろいろ悶着を起しながら入るらしいので、彼らもいろいろ揉めたのかもしれない。ヘリやら警官やらのしつこさを見ると、なんとなく裏でどういうやりとりがあったか想像できる。


 モデナの応援は応援歌(チャント)を歌うというようなものではなく、声を合わせて威圧感を出す、と言った感じで横浜FCサポーターのコールに近い。漢たちの試合なんだという空気がある。実際女性客はほとんどいなかった。


 15時30分試合開始なので、前半が終わる頃になると日が落ちてくる。そうなると急に寒くなる。前半終了後、私は売店に直行し、ホットワインを飲む。これはシナモンと砂糖を混ぜて熱したワインで、口当たりがよいので結構飲める。2杯くらい飲むとヘベレケに成る。これ日本ではあまり馴染みがないけれど、ヨーロッパでは結構普通で、サッカー場に行くと大抵飲んでいる。日本でも売り出せばいいと思うのだが。




 この試合のセキュリティは一般のサポーターのようで、胸のビブスに今日の試合のチケットを挟んでいる。彼らがニコニコ私に話しかけてくる。自分でチケットを買って働く文化がヨーロッパにあることに驚く。チームがよっぽど好きでなければできないだろう。


 さて後半開始。フォーメーションを替えてくるかと思うっていたが、前半と同じ展開。イライラしているのはサポーターも同じなようで、口笛が飛んでくるようになった。サポーター文化で見れば結構違う。一番違うのは、サポーターは必ずしも自分達の選手に対して応援をしているわけではない、ということ。使えないとされ選手に対する目は厳しい。例えばモデナの選手がオフサイドにかかったときのこと。ゴール裏がものすごいブーイングを飛ばした。最初私は、こんなわかりやすいオフサイドなのに、なんで審判に文句をつけるのか気になったが、実はそうではなく、こんなオフサイドに引っかかるんじゃないよと選手に文句をつけているのだとわかった。試合時間が過ぎるほど、不満の声が多くなっていく。パスミスをしてタッチラインを割る、クロスを上げたのに誰もいない、敵に簡単にボールを渡す、そういうシーンのたびにブーブー文句をたれる。


 こういうのってどうなんだろう。川崎フロンターレのサポーターは負けても拍手で選手を迎えるけれど、この試合は試合中に文句を付けてくる。緊張感が出て良いのかもしれないが、選手はやりづらいと感じているのではないか。それともサッカー的にはこっちの方がいいのか?私はわからない。


 試合の終わりの方で、お互いパワーゲームに入ったようなところがあったが、結局0-0のスコアレスドロー。試合終了の笛が鳴った途端、スタジアム全体からブーイングが鳴り響いた。私は席を立った。


 駅に戻る道はまだ開放されておらず、一旦町の中心部を経由していくようになっており、かなり遠回りして駅に着いた。土曜夜のモデナの町は本当にしーんと静まりかえっていて誰もいない。モデナは「ポルティコ」と呼ぶ列柱道路が町の特徴で、その中をトコトコと歩く。中世からそのまんま続く道路は大変美しく、もっとゆっくりしたかったが、時間がないので仕方がない。行きの列車で寝過ごした自分が悪い。





 駅に着く。本当はリストランテで当地名物のバルサミコ酢料理を食べたかったのだが、ボローニャ行きの発車時刻が迫ってきているのであきらめる。駅構内のマクドナルドでハンバーガーを買って車内で食べる。ボローニャからはIC(インテルシティ=急行)でフィレンツェに戻った。今日の試合内容を含め、少しわびしい気分になったので、レストランに出かけ、ピザとビールを頼む。明日はいよいよセリエA、ACミラン戦である。


(続く)
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