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2010年1月16日(土)

3日目:セリエBの世界(前編)

観戦記

初日
ボンジョルノ!イタリア
ローマの夜
2日目
フィレンツェへ
フィレンツェ探訪
3日目
セリエBの世界
(前編)
セリエBの世界
(後編)
4日目
サンシーロへ
ロナウジーニョ!ロナウジーニョ!ロナウジーニョ!
5,6日目
チャオ!イタリア

(前回からの続き)


1月16日土曜日。今日はいよいよサッカー観戦である。観戦カードはセリエB。モデナ対パドヴァ。モデナはフィレンツェの北100キロほどにある町で、日本で言うと東京-熱海間に相当する。ホテルで朝食を取って、少しフィレンツェ観光をして午前10時過ぎのにユーロスターに乗る。今日は晴れ。イタリアに来てから毎日晴れている。この時期、ドイツやオランダ、イギリスに行くと天気はいっつも曇りで薄暗いので憂鬱だった。やっぱり冬に旅行するなら南欧だなと思う。気温も暖かくて気持ちいい。


 暖かいのはいいのだが、私は冬の欧州サッカー観戦ということで、冬山登山も可能なほどの完全防寒な格好で来ている。今回持ってきた荷物の2/3は防寒具である。現在それらはすべて無駄になっている。使わないなら使わないでそれに越したことはないけれど、ポカポカ天気なので拍子抜けしまっている。実際、厚手のインナー、アルミを仕込んだフリース、バイク用の防寒ジャケットを着込んで電車に乗るとかなり暑い。脱ぐと思いっきりかさばってそれはそれで大変なのである。


10時30分発ユーロスター9404列車ヴェネツィア行きは定刻にフィレンツェサンタマリア・ノヴェラ駅を発車した。この列車はモデナを通らないのでボローニャで乗り換える。ボローニャまでは30分の短い旅である。出発するとすぐに車掌が検札に来る。次のボローニャまでノンストップであり、フィレンツェ-ボローニャ間のみ乗車する人が私を含めてきわめて多いからだろう。私も切符を見せる。車掌が通り過ぎると列車は畑の中を淡々と走りはじめた。トスカーナの日差しが燦々と降り注ぎ、だんだんうとうとしてきたので少し寝る。これが失敗だった。


 カクン、という音で目が覚めた。窓の外を見るとホームが見える。そして列車は動き出していて、加速を始めている。ホームの屋根には「Bologna」と書かれている。私の降りるはずだった駅である。




寝過ごしちゃった(´・ω・`)




 まずい・・・・・・・・非常にマズイ。イタリア(に限らずヨーロッパ全体がそうだが)ではホームに改札口がない代わりに車内改札は厳しく行われていて、無賃乗車が発覚すると一切の言い訳を聞かずに高額の罰金が科せられる。私はフィレンツェ~ボローニャ間の切符しか持っていない。さてどうしよう・・・・・


 ボローニャから乗った客が私の席の前に立ち、切符の座席番号と見比べている。どうやら私の席が別の人に予約されていたらしい。仕方がないので席を立ち、連結器の付近に移動する。列車は速度を上げ始めた。連結器の近くに液晶モニターが設置してあって250キロと表示している。うーーーーん、うなりを上げる走行音が私のイライラを増長させる。


 まあ仕方がない。とりあえず車掌には主張するだけ主張してあとは野となれ山となれだ。罰金を取られるならそれはそれで仕方がない。私は開き直って車窓を眺めた。


 10分ほどしただろうか。通りがかった車掌が「ボンジョルノ!」と私に声を掛けた。ついに来たか。私はボローニャまでの切符を黙って見せた。あらかじめ頭の中で応酬話法を作っておく。


 車掌はチラっとだけ切符を見るとパチンと鋏を入れ、「サンキュー」と私に返して行ってしまった・・・・。




何もチェックしていねえ・・・


 まあさすがイタリアというか、ラッキーというか、何とも言えない気持ちで次の駅まで乗り続けた。30分ほど乗り続けただろうか、列車はスピードを落とし、駅に停車した。駅名表には「ROVIGO」と書かれている。特急が止まるのに似つかわしくない小さな駅で、降りたのは私一人だった。


 さて、ここからボローニャに戻らなければならない。時間は11時50分、モデナの試合開始時刻は15時30分だから急いではないがゆっくりもしていられない。私は改札を抜け、窓口にボローニャまでの切符を買い直した。幸いボローニャ行き「R」(レギオナル:普通列車のこと)が10分後に来る。私はそれに乗ることにした。ボローニャまでは1時間。シーンと静まった田舎の駅が私の気持ちも静めてくれる。ラッキー。


 ホームで待っていると、列車がやってきた。5両編成の客車列車で地元買い物客で満員だったが、乗客の一人が座席を詰めてくれた。ありがたく礼を言って座る。みんな私をジロジロ見る。フィレンツェでもローマでも、誰も私を特別な目で見るようなことは無かったが、一歩田舎に入ればたちまち日本人は珍しい存在になる。イタリアだけでなく、スペインでもポルトガルでもそうだった。


 13時、ボローニャ中央駅に到着した。隣のホームに移動し、13時20分発のピアツェンツァ行き「R」に乗る。モデナまで30分である。13時50分、モデナ着。


 モデナは今でこそ急行しか止まらない小さな街であるが、かってはここだけで一国の首都だった。町の経緯はWikipediaを参照していただくとするが、駅前に大きな聖堂を構え、放射状に大きな道路が延びていくなど、かっての栄華を感じさせる。


ここ、モデナからほど近い所に「マラネロ」という町があり、そこに高級スポーツメーカー、「フェラーリ」の本社兼工場がある。本社は博物館を併設していて、F1マシンから市販車に至るまでずらっと並べてあるらしい。本当はそこに行ってみたかったのだが、そこまで行くと、試合の時間に間に合わないのであきらめる。モデナ中心部の大聖堂と塔が世界遺産に登録されているので試合開始まではそこを見に行こうと思う。


 ヨーロッパ特有の石畳をてくてく歩く。土曜日だからか、人があまりいない。別にいいと言えばいいのだが、今日はこの町で2時間後に試合があるのだ。なのにサポーターが誰もいないのはどういうことだ?私は4年前、ベルギーに行ったとき、試合中止の目に遭っている(当時のリンク)。あのときの悪夢が脳裏をかすめる。ちゃんとやるんだろうな。こんなにいい天気なんだぞ。


 塔は修復中だった。それでも世界遺産の大聖堂は見ることが出来た。私は西洋建築を語る術が全くないので論評などとてもできないが、500年前のことを想像するだけでも結構楽しい。純粋に美しいと思う。フィレンツェもローマもそうだけど、歴史的建築物を楽しむには事前にそれなりの知識が必要だなとつくづく思う。毎回思うが無学であることはどうしようもない。




 試合開始まであと1時間になってきたのでスタジアムに移動する。スタジアムが駅から近いことはグーグルマップで確認していて、それは大丈夫なんだけれど、問題はマフラーやユニホームを着たサポーターが全くいないことである。大丈夫かなあ・・・・・心配になる。日が少しずつ傾いてきた。路地を抜け、スタジアムに通じる通りに出たところ、突然大勢の警官が並んで立っていた。パトカーも巡回している。反対側の通りからコートを着た労働者風の人たちが三々五々集まってきている。ああ、試合はやるんだ。良かった・・・。深い、深い、安堵感が落ちてきた。遠くにスタジアムが見えてきた。


(続く)
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