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第2節 浦項スティーラーズ 対 川崎フロンターレ


(韓国:浦項スティールヤード)

初日その3:浦項スティーラーズ対川崎フロンターレ

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第1節 川崎フロンターレ-天津泰達

第2節 浦項スティーラーズ-川崎フロンターレ
初日
お金がおろせない
浦項へ
浦項対川崎フロンターレ
2日目
ここはどこだ!
3日目
さようなら韓国

第4節 
川崎フロンターレ-
セントラルコースト・マリナーズ

第5節 
天津泰達-川崎フロンターレ

第6節 
川崎フロンターレ-
浦項スティーラーズ

準々決勝第一戦 
川崎フロンターレ-
名古屋グランパス

準々決勝第二戦 
名古屋グランパス-川崎フロンターレ


(前からの続き)


 浦項バスターミナルに着いた後、まずやることは寝床の確保である。韓国ではモーテルが充実していて、非常に安いので、最近ではもっぱらモーテルに泊っている。モーテルとは日本のモーテルと同じで、用はラブホテルそのものなのだが、一人でも宿泊できる。たいていの場合、室内は清潔で設備も充実しているので満足している。


モーテルはバスターミナルや大きな駅周辺に固まっていることが多い。浦項でも同じで、バスターミナルの裏手はモーテル街であった。私は「適度」に立派そうなホテルにねらいを定めて中に入った。幸い空き室があった。値段は4万ウォン(3000円)。ダブルベッドに大きなバスタブ、エアコン、インターネット端末付きでこの価格は助かる。、幸いクレジットカードが使えた。


 ベッドの上に荷物を放り出し、少し休憩してスタジアムに出かける。時間は6時ちょうど。日はまだ高い。バスターミナルに戻り、客待ちをしているタクシーに乗り込んで「チュックジャン(足球場)」と告げると運転手はすぐに走り出した。


 ターミナルを発車してしばらくすると港湾沿いにでた。港に架かる大きな橋を渡ると浦項製鉄の敷地内に入る。大きなクレーンが乱立し始め、綺麗に植え込みがされた道路に出るとスタジアムの前に着いた。ボランティアの人たちが愛想良く誘導してくれる。私はここでタクシーを降りた。タクシー代は3500ウォン(約320円)。


 浦項スティールヤード。去年の同じ頃、ここに来て試合を観戦した。そのときは当分来ることはないだろうと思っていたけれど、2年連続で来ることになるとは、そして対戦相手が川崎フロンターレになることは夢にも思わなかった。できれば初めてのスタジアム-例えば水原とか-のほうが良かったのかもしれないが、ここは私が行ったことのあるのスタジアムの中で、最もお気に入りの一つである。お洒落さの全くない、無骨でシンプルな外観はサッカーをする上で、観戦する上で必要かつ充分な要素を兼ね備えている。ここでは女子サッカーは似合わない。男が戦う場所という雰囲気がある。


 屋台が出ているので少しつまんでいく。ホットドックとか得体の知れない肉とか。ダンゴムシを煮込んだような怪しい食べ物もあって、かなり不気味だったが、一つ1000ウォン(70円)程度なので挑戦してみる。どんなにお世辞を使っても決してうまいとは言えないが、多少の腹ごしらえになる。


 当日券は絶対にあるはずと決め込んでいたが、微妙に心配になっていたのだが、幸いチケットは買えた。10000ウォン(700円)という先進国とは思えない値段に感謝をしつつ、中に入る。アウェイサポーター席は反対側になるのでスタジアムの外周を半周することになったが無事に入場できた。
 

 試合開始1時間前。両チームのサポーターが盛り上がってくる。川崎サポーターが歌を歌い始める。とたんに浦項サポーターはブーイングをはじめる。浦項サポーターの数はホームチームとしては決して多くはなく、少しばらけている印象があるが、声は大きい。座席の上にかかる厚い屋根が反響しているのかもしれない。


 選手がウォーミングアップをはじめる。ブーイングはますます激しくなる。久しぶりにアウェイの空気を感じる。こういう空気は好きだ。もうJリーグでは浦和レッズですら感じることはできない。世界で一番安全なスタジアムを目指すJリーグは煽り合いを必要以上に排除し、みんなが楽しめる明るいスタジアムにしていった。それがどこまで良いことなのか私にはわからない。


 選手入場の時刻が近づくと、浦項サポーターは「 I LOVE DOKUDO 」の横断幕を掲げる。その瞬間川崎サポーターの空気が凍り付く。独島、つまり竹島のことだが、川崎サポーターにとってこういう政治メッセージとも受け止められる横断幕を貼られた経験はない。あまり真剣に取り合う必要もないただの煽りだけれど、浦項市の所属する慶尚北道は、彼らの言う独島を管轄しているし、かの島へ渡る船は浦項港から出る。それだけ竹島問題は他の韓国都市よりは間近な問題として知る必要があると思う。もっとも浦項製鉄(POSCO社)は設立から現在の運営に至るまで日本製鉄社と深いつながりがあり、現地では日本人駐在員も多く滞在しているので、日本人だからといって不必要に身構えることもない。


 お互いテンションが高くなってき頃にAFCアンセムが鳴り出して選手入場。AFCもだいぶセンスが良くなってきた。絶対勝つという期待を込めて試合開始。


 試合は相変わらず調子の出ない川崎にたいしてホーム故絶対に負けられない浦項の攻め、という展開になった。浦項はそれほど弾いて守っているわけではないのだが、川崎はディフェンスが相変わらず不安定で、攻撃がどうしても単発になってしまう。好守の切り替えがうまくいっていない不安を見透かされたように金在成に先制されてしまう。嫌な空気が漂うが、サポーターはあきらめずに歌い続ける。


 先制されて目が覚めたのか、川崎の攻撃が機能し始める。山岸をスタメンから外した戦術も効いてきたのか浦項を攻める場面が多くなる。コーナーキックから寺田が同点に押し込むと、試合はフロンターレペーストなった。





 試合は概ねフロンターレが押し気味に進めていたのだが、残念ながら得点はならず。1-1で試合終了。勝てた試合を勝ちきれなかった、微妙な倦怠感がスタンドを覆う。まあ仕方がない。最高の結果ではないが、決して悪い結果ではない。アウェイで相手に勝ち点3を与えなかったというのは大きなアドバンテージになる。第一節で川崎は天津に勝ち、浦項はセントラルコーストに引き分けている。この結果、2節を終えて川崎は浦項に勝ち越した。あとは今節、セントラルコーストが勝たなければ川崎は1位が確定する。前向きにとらえていきたい。


 選手挨拶が終わるのを確認すると、私は小泉さんと一緒に外に出た。退場ラッシュが始まる前に外に出たかった。タクシーを早めに確保したいという意図もあった。一昨年の全南戦は退出が遅れたためにタクシーの確保が困難で、非常に難儀した痛い思い出がある。


 浦項は港湾都市らしく、赤や黄色の光が道路を照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。私たちはその中を歩いた。交通量は多く、車がびゅんびゅん抜いていく。時折、「ニホンジン!!」「チョッパリ!!」と罵声が飛ぶ。まあアウェイとはこういうものだ。韓国は反日感情の強い国だが一般の日本人として旅行している限り不愉快な思いをすることは少ない。ただ、ひとたび「スイッチ」が入ると、その高揚した気分を納めるのには時間を要する。これに気がつかないと韓国人の人間性を誤解する。「チョッパリ」と罵る韓国人がひどい人で、親切に面倒見てくれる韓国人が良い人、という訳では決してない。


 1キロほど歩いただろうか。私たちはタクシーを拾うことができた。小泉さんの宿泊するホテルで一服し、近くの韓国料理店で少し飲んだ。祝勝会にしたかったが仕方がない。お疲れ様、という感じで少し飲んだ。夜も遅いし私自身あまりほうではないので、軽く、といった感じだが、楽しかった。海外のこと、フロンターレのこと、Jリーグのこと。いろいろ話した。プルコギとビール3本、キムチ一式他、突き出しがあって2万ウォン。(1500円)。信じられない位安かった。このウォン安が続いている内にもう一度行きたいとも思う。


 小泉さんと別れた後、タクシーを拾い、私はモーテルに戻った。少し疲れたので風呂に入ろうとしたが、困ったことに水しか出なかった。しょうがないのでシャワーだけでも、と思ったが、こちらは熱湯か冷水のどちらかしかでなかった。試合よりもこちらのほうに挫折感を感じた。仕方がないのでベッドに入り込んで寝る。明日は慶州から釜山に出る予定である。


(続く)
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