銅鑼湾駅に戻るとすぐに地下鉄に乗って海底トンネルで半島側に戻る。ホテルのある尖沙咀を通り過ぎ、さらに20分程度乗って太子駅で降りる。道路を一つ渡ると一面が花売り場に突き当たる。ここは花城公園と呼ばれるエリアで、四方八方が花屋、花屋、花屋である。こんなに花屋が集中して商売できるほどの需要があるのかと思うが、面白い光景ではある。私はこういう日本にはない景色を見るのが好きだ。それは世界遺産というような大それたモノでなくてもいい。その国、その町の一面が日本にはないと感じることができればそれでいい。
花城公園を抜けると照明塔が現れてきた。ここが旺角大球場で、今節最後の試合が開催される。二日で4試合観戦ともなると食傷気味になるのは覚悟していたが、とりあえずこの試合を観戦すれば目的は達成される。私はチケットを買って中に入った。
旺角大球場は昨年(2011年)大改装されたサッカー専用球技場で、香港サッカー協会が国際試合にも対応できるよう、ロッカールームから取材エリア、ドーピングルームから大型ビジョンまで気合い入れて作り替えた。全体がオレンジ色に統一されたスタジアムで、メインスタンドとバックスタンド全面に屋根がかかっている。ゴール裏は傾斜があり、アウェイ側にビジョンが設置されている。私は中に入って大きな既視感に包まされた。・・・・これNACK5スタジアムのミニチュア番じゃないか。下の写真がそうですが、なんとなく雰囲気が似ていませんかね?
最後の試合のカードは公民対和富大埔。公民には中村祐人というプレーヤーがいて、背番号10をつけている。私はこのチームに日本人がいるとは知らなかったが、どこかで聞いたことがあるなあ・・・・とスマホで調べたところ、元浦和レッズ強化部長、中村修三氏の子息ということがわかった。そういえば、数年前に話題になった。今は公民でプレーをしているのか。みんな頑張っている。私だって仕事場に出れば頑張っていると思い込んでいるけれど、食い扶持をかけて仕事をしているか、とか明日を信じて仕事をしているのか、とか言われれば、何も言えない。たぶん、人生の覚悟のようなモノが、一般のサラリーマンと彼らとでは違う。Jリーグの選手でもそうだけど、香港とかシンガポールとかで日本人選手を見るとつくづくそう思う。
日が落ちた頃を見計らって試合開始。お互いがフォワード突撃スタイルをとっていて見ていて面白かった。しかもちゃんとゴールがきまる。公民が前半19分と35分に2-0で先制すると、和富は40分、42分、45分と5分間に3点も入れ、逆転する。凄い!私は前半35分時点で2-0から逆転してハーフタイムを迎えた試合というのは他に記憶がない。特にひっくり返された公民のサポーターは声すら出ていなかった。
後半が始まると、公民の怒濤の反撃が始まる。後半3分に1点返して同点とすると、26分、27分、30分と4分で3点とって6-3に。ロスタイムに中村がとどめの1点を取って7-3で試合終了。まあ馬鹿試合だった。
まあ面白いといえば面白かったが、両チームともディフェンスがガタガタなのと、前線に俺様的なフォワードを入れているのでゴール前のチャンスが頻繁に起きていたのが多点試合の原因ではなかったかなと思う。監督としては頭が痛いだろうけどね。公民のフォワードが点を取ったときの決めのポーズが誰かに似ているような気がするが、誰だったかな?
試合が終わるとちゃんと挨拶に行く両チームの選手達。日本では当たり前の風景だが、海外では挨拶せずにベンチに引っ込むチームも多いので、よいのではないかと思う。勝った公民は大喝采、負けた和富は厳しいヤジが飛ぶ。まあそうだろうな。日本でもそうなるよな。まあ気持ちはわかる。
スタジアムを出るとき、和富側のベンチを見るとサポーターが居残っている。警備も大勢駆けつけ、なんやかんややっている。和富は一応アウェイチームなんだからこういうところで問題を起こすのはやめた方がいいけどね。7-3というのはなあ・・・・。私も経験したことがあるが、7失点すると涙も出ないんだよね。7得点すると実に気分がよいので、その対比がなんとも。
旺角駅から太子駅にかけては典型的な香港の市街地である。長距離バスターミナルの発着場でもあるらしく、中国各地へのバス時刻表がずらりと並んでいる。その大半は私の知らない地名だが、所要時間が5時間以上の便も結構あって、どんなところだろう。乗ってみたいなあ、行ってみたいなあ、そう思わせてくれた。
スタジアム近くの食堂で遅い夕食を食べる。メニューを見るとどんな料理かわからないが、●●魚、というのと●●肉というのがあったので一皿ずつ注文してみた。カールスバーグも頼んでチビチビやりながらできあがりを待つ。とんでもないゲテモノが出てきたらどうしようとちょっとドキドキしたが、ごく普通の煮魚と蒸した肉が出てきた。この香港旅行ももうすぐ終わる。私はカールスバーグをもう一瓶頼み、適当に飲んだり食ったりしながら時間を過ごした。
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