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2012年11月12日(月)


四日目:ホームスタジアム


観戦記

初日
チョンキンマンションの夜は更けて(その1)
チョンキンマンションの夜は更けて(その2)
U-18橫濱FC香港
あやしいマッサージ(香港編)
2日目
南區 vs 日之泉JC晨曦
がんばれ吉武剛
3日目
香港サッカー協会
香港スタジアム
最後の試合
4日目
ホームスタジアム
最終日
さようなら香港
前回からの続き
 4日目の朝を迎えた。飛行機を予約した当初は今日帰国する予定だった。しかし先月、仕事場でピーク時に年休取得者が続出して大変な目にあったことから頭にきて日程を一日延長することを認めてもらった。よって帰国は明日となる。今日は何もない1日。さて何をしよう。


海外で当てもなくぶらぶらすると言うと、ツアーでしか行かない人たちは結構うらやましがったりするのだが、実際は予定を立てなければどこも行かないのがほとんどで、この日もどうするか決めかねているうちに午前10時近くになってしまった。


 今回の香港遠征は橫濱FC香港戦を見るのが目的だったのだけれど、今回はアウェー戦なのでまだホームスタジアムを見ていない。中に入れるかどうかわからないけれど、ちょっと行ってみようと思う。私は地下鉄に乗り、香港島に向かった。


 橫濱FC香港のスタジアムは小西彎運動場という。城巴路線に乗って30分程度か。終点の紫彎駅で降りて1キロちょっと。十分に歩いて行ける距離だが、駅を降りると目の前にミニバスというか、ミニバンが止まっていて、行き先表示に小西彎運動場とかかれていたので飛び乗った。客は私一人だったが、だんだん人が乗り込んできて満車になった。ちゃんと降りられるか心配だが、まあ問題はなかろう。


 ミニバスはチョコマカ止まっては乗客を乗せ、またはおろして行った。日が燦々と差し込んでいて眠くなる。いい気持ちになりかけた頃、スタジアムが目の前に飛び込んできた。ここで降りる。


 小西彎運動場は海に面したのどかな競技場で、うららかな陽を浴びた敷地は心地よく、所々にあるベンチに座って寝転びたい位だった。ここは香港でも郊外に位置するため、海の水は綺麗で温かかった。陽の光が係留しているヨットに差してまぶしい。日本で言うと逗子、いや熱海の光景に近い。もちろん気温はそれらよりもずっと暖かい。


 競技場は開放されていてランニング愛好者の練習場になっている。アジアの陸上競技場はほとんどが無料開放していて、使用料金を取るのは日本くらいではないかと思う。韓国の陸上競技場も早朝から夜間まで無料で開放している。夜には照明もつく。


 中に入ってみると、馬蹄形のグラウンドを囲む形で観客席がたっている。観客席に上がってみると、見晴らしは確かによいがピッチが異常に遠い。陸上トラックの外周部に無駄な部分が多すぎる。クリケットでもできるんじゃないかと思うくらい、敷地が広い。日本にこの競技場を持ってきたら大ブーイングが起きるだろう。






 スタジアムの裏手にタワーマンションがたっていて、スーパーマーケットを併設している。スーパーの一階部分はレストラン街になっていて、韓国料理や中華料理屋、回転寿司屋もある。お昼まで少し時間があるが、おなかが空いたので昼食をとる。中華料理屋に入って北京ダックを頼んだ。少し値段が高かったが、香港に来て安ホテル→サッカー2試合観戦の繰り返しだったので、ちょっと贅沢をしてもいいかなと思った。本場だからさぞかしうまいだろうと期待したが、油が多く、あまりおいしいと思えなかった。がっかり。


 スタジアムを見学後、半島側に戻る。特に当てはなかったが、九龍に行ってみることにした。かって「魔城」と恐れられた九龍城の跡を観たかった。地下鉄に乗って樂富で降りる。ここから九龍城までは10分程度歩けばつく。


 私が一人で海外旅行に行ったのは1989年で、台湾、香港経由のオーストラリア行きだった。直行便に乗る予算がなかったので、キャセイパシフィックの安い便に乗り、行き帰りに香港に宿泊している。その際、九龍城の横を通ったのだが、当時の印象は今でも強く残っている。スラム然とした高層ビルは、少なくとも日本では絶対に見ることができないモノで、中に入ったら一生出てこれないのではないかと思わせるものだった。


 実際は言われるほど怖い物ではなかったらしい。魔界と言われる原因となった治外法権についてはきちんと香港政府が犯罪を出さぬよう管理していて、少なくとも治安に対しては問題はなかったらしい。もちろん九龍城ないでは香港政府の政治が及んでいないのは事実で、それに端を発した無許可の歯科乱立などもあったのだが、これも腕がよくなければ淘汰されるわけで、1990年代まで生き残って営業しているということはそれなりに信用を得ていたたということなのだろう。他にも言われていた麻薬の取引などは、あったのかもしれないがそれは九龍に限った話ではなく、全世界のあらゆるところで行っている話である。


 駅を降りて下り坂をえっちらおっちら歩くと九龍城跡の裏門についた。九龍城は正確には「九龍寨城」と呼び、看板が立っている。裏門から入るのは忍びないので外周路に沿って歩き、正門から入る。





 かってのスラム街は完全に撤去されていてただの公園になっていた。中心部にある集会所だけが残されていて、そこにかっての面影を残す資料だけが掲示されているだけだった。付近を歩いてみると予想以上にエリアが狭いことに気づく。東京ドームより狭い範囲に5万人もの人が生活していたと思うと、ちょっと感慨を覚える。この先は旧香港啓徳空港跡で、この九龍城は着陸コースの延長線上にある。結構怖いところだったんだろう。


 一通り見た後地下鉄に乗って深圳に行く。別に用があったわけではないが、中国国境を越えてみたかった。深圳は中国有数の大都市だが、香港と接していることはあまり知られていない。本当は香港ではなくて深圳に泊まった方が安くて快適だったのだが、国境越えが面倒だったのでそれはやめた。国境の駅、羅湖まで約1時間。だだっ広いホームに着くと、イミグレーションの案内が大きく書かれてある。それに従って歩く。まずは香港出国審査。それを終えると川を歩道橋で渡り、中国の入国審査に入る。川の両岸は崖で、下のボートには公安が警備している。香港は中国に返還されたとはいえ、まだまだ一般の中国人は香港にはこれない。この辺は厳しいなと思う。


 中国の入国審査でパスポートにスタンプを押してもらうと中華人民共和国に入国したことになる。そのまま通りを歩くと深圳駅に出た。中国らしい、威圧感を感じる駅舎だった。空はどんより曇っている。気のせいかもしれないが、何かこう・・・陰気くさい。道ばたもトイレも香港よりもずっと汚くて、この辺が民度の差なのかなと感じた。最初はこのまま広州にいって、現地でうまいモノを食べてから戻ろうかと思ったが、このまま香港に戻ることにした。来た道を引き返し、中国の出国審査を終えて香港の入国審査を受ける。その度にパスポートにスタンプが押される。パスポートにスタンプを押すためだけに深圳にきたようなモノだ。改札を抜けて目の前の地下鉄に乗り込む。疲れているので、一等車に乗ることにした。地下鉄に一等車というのは珍しいが、香港と深圳を結ぶ車両には一等車が連結されている。料金は倍もするが、快適である。隣の二等車がギュウギュウであることを考えると正解だった。車両はすぐに発車した。しばらくすると眠くなったので寝た。今日はこのままホテルに帰る。明日は帰国である。


(続く)
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