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ガンバ大阪はフェアだった



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わかの観戦日記
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初日
中東へ

2日目
UAEの路線バス
ヨルダン入国

3日目
シリア入国
ダマスカスのスタジアム

4日目
レバノン入国
拘束される
AFCカップ

5日目
バールベック遺跡

6日目
ガンバはフェアだった
遙かなるバグダッド
また拘束される

8日目
ヨルダンリーグ

9、10日目~最終日
さようなら中東
 6日目。今日も観光である。今日はシリア最大の観光名所、パルミラ遺跡を見る。その前にホムスのスタジアムを見に行こうと思う。本当ならここでACL準決勝、アル・カラマ対浦和レッズの試合を観戦する予定だったのだが、ガンバが勝ってしまったので叶わぬ夢となった。まあそれはそれで良いことと思うことにする。準決勝が日本勢対決になったのは決して悪いことではない。


 ホムスのスタジアムは「ハーリド・イブン・アル・ワリッド・スタジアム」と言う。どこにあるのか全くわからないのでタクシーの運転手に「アル・カラマ、スタジアム」と告げた。運転手は大きく頷き「ガンバ大阪アレアレ」とつぶやいた。良かった。どうやら通じたようだ。


 しかしこの運転手はどうしたことか、私を市内のモスクで降ろした。スタジアムはこの奥にあるという。本当なのか?私は半信半疑のままモスクに入った。モスクの前の広場では子供達がサッカーに興じている。私はその子供の一人を呼び止めた。「アル・カラマ、スタジアム・・・・」と告げるた瞬間、子供達が一斉に私を取り囲んだ。「ガンバオオサーカ!!ガンバオオサーカ!!」口々に叫ぶ。私に抱きつく子供もいる。ひょっとしてスリかとも思ったが違うようだ。みんな人なつっこい。困り果てていると、引率の教師らしき人が近づいてきて、「どうしたのか?」と英語で聞いてくる。「スタジアムに行きたいんだ」と私が告げると、彼は「ここではないよ」と笑って答える。


 どうも、モスクを「スタジアム」という事もあるらしい。そういえば駅や空港などではイスラム教徒用の礼拝室のことを「Prayers Room」」と表示しているので、モスクを「スタジアム」と呼んでも間違いではないかもしれない。


 彼は親切なことにタクシーを呼んで私をスタジアムまで運ぶように指示してくれた。子供達は相変わらず私につきまとう。「ガンバオサカ」「ジャーポン」の連呼である。彼は申し訳なさそうに私を見る。「試合を観たのですか?」と私は聞いてみた。彼は「教室の子供達みんなで見に行きました。ガンバは強かった。サポーターは素晴らしかった。元々私たちは日本人が好きです。この町の救急車は日本から無償で貰ったものです」「アメリカは嫌いです。でも日本は好きです。ガンバもそうでした」


 タクシーの運転手が手招きしたので乗り込んだ。礼を言って別れる。運転手はすぐに走り出した。そしてそれほど遠くまで行かないところで私を降ろした。少し離れたところに照明灯が見えた。あれがそうか。30SP(約80円)を払って降りる。あまり高級な地域ではない。ダウンタウンの空気がする。人気はあまりない。天気は晴れで直射日光が照りつける。私はスタジアムの周囲に沿って歩いてみた。裏口に当たるところの門が開いていたので入ってみる。その道はスタジアムまでまっすぐ続いていて、ちょうどゴール裏スタンド入口に出た。私はそのまま中に入った。


 スタンドに上がると何人かの少年がスタンドでたたずんでいる。今は平日の午前中だが学校はどうしたんだろうと気になる。就学率が100%に近い国なんて一部の先進国しかないからこれが普通なのかもしれないが、複雑な気にはなる。彼らは私を見ると「ガンバオサカー」とはやし立てる。私は気にしないで中を見た。




 スタジアムはメインスタンドが個席屋根付き、それ以外は階段席と言う、アジア標準型とも言うべきものでそれほど興味を引くような造りではなかったが、ここでガンバが試合をしたのかと思うと、ちょっと感慨深い。芝は思いの外、良く手入れされている。私は石段に座ってペットボトルの水を飲んだ。空は青く、空気は乾いている。少年達も黙ってたたずんでいる。しーんとして時間が止まったような感じがする。しばらくして、私は席を立ち、一端外に出てからメインスタンドに回った。盗み見のようなことはしたくないのでマネージャーに挨拶はしたかった。外に出ると、ちょうど恰幅の良いおじさんがこちらに来たのでおじぎとをする。握手をした後、スタジアムを見たいんだが・・・と言うと、彼は喜んでメインスタンド正門に手招きしてくれた。


 彼はアル・カラマスポーツクラブの少年部門の責任者だそうだ。当然、ガンバ戦にも立ち会っている。私を競技場の中に招き入れるとスタッフルームに案内してくれた。いろいろ紹介して貰う。GMは外出中だが、テクニカルコーチが当時の様子を説明してくれた。


 彼: 「ガンバは強かった」
 私: 「ハア・・」
 彼: 「ああいうチームと戦えたのは良かったと思う。シリアにはそういう強いチームはいない」
 私: 「フーン・・・・・」
 彼: 「ガンバ大阪サポーターの応援は素晴らしかった。シリアにはない応援だった」
    「あんなに日本から来るとは思わなかった」
    「彼らの応援はとってもフェアだったよ」「私は彼らが好きになったよ」
 

 私:「へー」


 私のイメージしているガンバサポーターとは微妙に違う気がするが、それは嘘でもお世辞でもなく、ある程度は本音なのだろうと思う。今日、ホテルを出てからここに来るまで「ガンバオオサカ、アレ、アレ、アレ♪」と言うチャントは何度も耳にした。そしてこの後もバスターミナルやバスの車内などでもさんざん言われた。当時の試合が印象に残るものでなければ、そしてガンバがフェアで強くなければこうはならないだろう。


 シリアでは元々日本人の印象がよい、と言うのもあると思う。複雑な気持ちはあるけれど、彼らが日本に良いイメージを残したのは凄いと言えるだろう。彼らは大阪と言う地名を知らなくてもガンバ大阪は知っている、それは凄いことだと思う。下衆な話だが、ユニフォームに書かれた「Panasonic」の広告効果は相当なものではないか。そう考えるとACLに出る価値というのは非常に高いし、やはりこの大会に出なければならない。


 私は去年、インドネシアのマランに行った時のことを思い出した。このときでも「カワサーキ」とさんざん言われた。そして町ぐるみで歓迎してくれた。それは「招待者」としてのビジターではなく、ちゃんと「敵」としてアウェイの歓迎をしてくれたことが印象に残っている。あのような経験はなかなかできない。やはりサポーターとしてACLに行かなければいけないんだと思う。ちなみに彼らはカワサキフロンターレを川崎市のチームではなくて、バイクメーカーが所有する企業クラブだと思いこんでいたらしいが。


 マネージャーにスタジアムを案内してもらう。更衣室、ベンチ、貴賓室。「ここがガンバの選手席」「あそこがサポーターの席。特等席を用意したよ」「グラウンドは開放している。ただしトラックだけ。ピッチは使わせない」「ホムスにはサッカーチームが二つあって、サポーターはとっても仲が悪いんだ」


 その他、いろいろとここでは書けないことを聞いた。私も日本のことやJリーグのことを話した。楽しい時間が過ぎた。私は礼を言って出ようとした。このマネージャーは私をバスターミナルまで送ってくれた。また来てほしい。そうしたら貴賓席を案内するよ。ジュースでも酒でも何でも用意する。
 

 フロンターレがアル・カラマと対戦する確率はゼロではない。もしその機会があるのならば、私はきっとこの町に来るだろう。


(続く→) 


 
 
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